ワンポイント

その3 吸収合併の場合

 吸収合併の場合も、存続会社に複数の労働条件が存在することとなる。この場合も不都合が生じることが多い。

 例えば、存続会社では午前8時出社なのに、吸収合併で移ってきた従業員は以前と同じ午前9時出社では、元からいた従業員は納得するはずがない。

 また、賃金体系の違いにより毎月の賃金に違いが出るといった事態になれば、なおさらのことである。

 そのため、労働条件統一のための調整が問題となるが、一般的には労働協約や就業規則の変更で対応するケースが多い。この場合も、好条件に統一されれば問題は少ないが、必ずしもそうなるとは限らない。  

労働契約法9条では、労働条件の不利益変更は原則として労働者の同意が必要であると定めている。一方、10条では不利益変更の必要性が認められて変更内容が合理的であるとき、労働者や組合と誠実な協議後であれば同意なしに変更できる例外を定めている。裁判では、労働条件の切り下げの必要性、内容の合理性、労働者や組合との誠実な協議が行われたかという点が争点になる。

 労働組合のない企業が、労働組合のある企業を吸収合併するにあたって、組合への解散要求は不当労働行為だが、組織の縮小にしたがって組合が「なくされて」しまわないよう、労働組合の踏ん張りどころである。