国際通貨基金（IMF）「世界経済見通し（2022年10月発表）」の2022年世界経済見通しによると、2022年の実質GDP成長率予測を前年比+3.2％とし、前回7月の見通しを据え置きました。先進国の見通しは数年ぶりの物価上昇や、ロシアのウクライナ侵攻、長引く新型コロナウイルスのパンデミックなどにより下方修正され、新興国にもインフレが大きく影響し、中国経済も減速が予測されています。日本の2022年の成長率は+1.7%と7月時点から据え置かれました。
　2023年の見通しは、先進国では前年比+1.1％と大幅に下方修正され、世界全体でも+2.7％と4月の予測を下方修正しました。IMFは「世界金融危機と新型コロナのパンデミックが深刻だった一時期を除いて、2001年以降でもっとも弱い成長の推移となる」と予測しています。
　トラック運輸産業は、日通総研「2022年度の国内貨物総輸送量の見通し」によると、国内貨物輸送は2022年度通期で0.5％減と再びマイナス転換を予測しています。消費関連貨物は、2020年度の大幅な落ち込みに対する反動増が続くことに加え、個人消費の増加もあって4.6％の増加が期待できるものの、2019年度の水準を約4分の1下回る見通しです。生産関連貨物は0.7％減を予測、建設関連貨物は2.7％減少を見込んでいます。なお、一般貨物に限定すると1.3％増を見込んでいます。
　今回の調査は、136組合（133,873人）のご協力をいただきました。本冊子には、賃金・労働条件実態調査の結果を中心に、春闘解決内容調査、企業内最低賃金協定締結状況調査の結果も一部収録しました。
　本年の調査結果では、月額賃金（2022年6月）は加重平均（以下同様）で352,951円（前年比0.2％増）となり、651円の増額となりました。内訳は、所定内賃金は前年と比べて7,512円の増額、仕事給は9,553円の減額、所定外は2,692円の増額となっています。また、労働時間は198.8時間（前年197.9時間）で、前年から7.2時間（3.8％）の増加となりましたが、近年のピークである2006年（220.9時間）より約10.0％減少した水準となっています。
　また、2022年の年間賃金は5,395,648円で、前年を212,526円上回りました。年間総労働時間は2,404時間（前年2,389時間）となっており、前年より15時間増加しています。
　職種別の賃金実態をみると、本年も事務職と比較して運転職の賃金総額に占める所定内賃金の割合が低くなっており、男子事務職の所定内賃金比率73.8％（賃金総額385,803円）に対し、男子大型運転職は52.7％（同375,396円）となっています。
　また、平均年齢は今年も単純平均が45歳を超える結果となりました。厚生労働省の2021年賃金構造基本統計調査による産業全体の平均年齢は44.1歳であるのに対して、道路貨物運送業は48.6歳と、平均で4.5歳の差があります。過去の水準（2004年時点）と比較しても、産業全体が41.3歳だったのに対し、道路貨物運送業は41.7歳と0.4歳の差であり、平均年齢の格差が拡大しています。運転免許新規取得者が減少傾向にある中で、ドライバーの平均年齢の上昇スピードは産業全体より速まっており、労働集約型産業にとって必要不可欠な「人財」の確保のためにも、労働諸条件の改善と格差是正に向けて、より積極的に取り組まなければなりません。このような労働条件を改善させ、働くものの雇用の安定、生活向上を図るとともに、組合員の働きがいはもとより、魅力のある産業を実現するためにも、「年間所得の引き上げ」「賃金制度の確立・改善」「企業内最低賃金協定の締結」「65歳までの定年延長」「総労働時間の短縮と時間外割増率の引き上げ」などが求められています。
　労働組合にとって、春季生活闘争はそのための運動（手段）の重要なポイントとなります。来るべき2023春季生活闘争の取り組みにあたり本資料を参考にしていただければ幸いです。
　なお、2019年から調査対象職種と労働時間に関する新たな調査項目を追加しました。本書に掲載したこれらの集計結果は、4年目の調査結果でもあり、データはまだ蓄積されていませんが、これからの運動の貴重なデータとして活用していきたいと考えています。今後も継続して調査を実施しますので、回答へのご協力をお願いいたします。
　最後に、ご多忙の中、本資料の作成にご協力いただきました各組合ならびに地連・都府県連のみなさまにお礼申し上げ、報告とします。

運輸労連 中央本部 労働政策部