2018年度賃金・労働条件実態調査報告書の発刊にあたり

 日本経済の成長率の見通しは、国際通貨基金(IMF)「世界経済見通し(2019年10月発表)」によると、7月発表の見通しと比べて、2019年は0.9%に据え置き、2020年は0.5%(+0.1ポイント)に引き上げました。
 トラック運輸産業は、日通総研「2019年度の国内貨物総輸送量の見通し」によると、消費関連貨物は個人消費が伸び悩む中で1.5%減と予測。生産関連貨物は、設備投資の大幅な減速や鉱工業生産・出荷の減少にともない1.6%減とマイナスへの反転が予測されています。建設関連貨物は、前年度補正予算の執行を受け公共投資がプラスに浮上するものの、大型公共土木工事の執行が期待できないほか、住宅投資も駆け込み需要の規模が小さく、マイナスにとどまる中で0.3%減と前年度水準割れが見込まれています。その結果、総輸送量は1.0%減と2年連続のマイナスが見込まれています。
 今回の調査は、136組合(108,196人)のご協力をいただきました。本冊子には、賃金・労働条件実態調査の結果を中心に、春闘解決内容調査、企業内最低賃金協定締結状況調査の結果も一部収録しました。
 本年の調査結果では、月額賃金(2019年6月)は加重平均(以下同様)で359,274円(前年比4.4%増)となり、15,042円の増額となりました。内訳は、所定内賃金は前年と比べて15,909円の増額、仕事給は4,247円の増額、所定外は5,114円の減額となっています。また、労働時間は199.9時間(前年210.1時間)で、前年から10.2時間(4.9%)の減少となるとともに、近年のピークである2006年(220.9時間)より約9.5%減少した水準となっています。
 また、2018年の年間賃金は5,223,121円で、前年を228,725円下回りました。年間総労働時間は2,443時間(前年2,516時間)となっており、前年より73時間減少しています。
 職種別の賃金実態をみると、本年も事務職と比較して運転職の賃金総額に占める所定内賃金の割合が低くなっており、男子事務職の所定内賃金比率79.0%(賃金総額407,415円)に対し、男子大型運転職は47.4%(同390,267円)となっています。
 また、平均年齢は今年も単純平均が45歳を超える結果となりました。厚生労働省の2018年賃金構造基本統計調査による産業全体の平均年齢は42.9歳であるのに対して、道路貨物運送業は46.7歳と、平均で3.8歳の差があります。過去の水準(2004年時点)と比較しても、産業全体が41.3歳だったのに対し、道路貨物運送業は41.7歳と0.4歳の差であり、平均年齢の格差が拡大しています。運転免許新規取得者の減少が続く中で、ドライバーの平均年齢の上昇スピードは産業全体より速まっており、労働集約型産業にとって必要不可欠な「人財」の確保のためにも、労働諸条件の改善と格差是正に向けて、より積極的に取り組まなければなりません。このような労働条件を改善させ、働くものの雇用の安定、生活向上を図るとともに、組合員の働きがいはもとより、魅力のある産業を実現するためにも、「年間所得の引き上げ」「賃金制度の確立・改善」「企業内最低賃金協定の締結」「65歳までの定年延長」「総労働時間の短縮と時間外割増率の引き上げ」などが求められています。
 労働組合にとって、春季生活闘争はそのための運動(手段)の重要なポイントとなります。来るべき2020春季生活闘争の取り組みにあたり本資料を参考にしていただければ幸いです。
 なお、今年から調査対象職種に「男女けん引運転職」「男女中型運転職」「男女準中型運転職」を追加しました。あわせて、「働き方改革関連法」の施行にともない労働時間に関する新たな調査項目も追加しました。本書に掲載したこれらの集計結果は、初めての取り組みでもありデータはまだ蓄積されていませんが、これからの運動の貴重なデータとして活用していきたいと考えています。今後も継続して調査を実施しますので、回答へのご協力をお願いいたします。
 最後に、ご多忙の中、本資料の作成にご協力いただきました各組合ならびに地連・都府県連のみなさまにお礼申し上げ、報告とします。

運輸労連 中央本部 労働政策部