2016年度賃金・労働条件実態調査報告書の発刊にあたり

 日本経済は、国際通貨基金(IMF)によると、2016年の成長率は0.5%、2017年は0.6%に上方修正しましたが、消費増税の延期などが主因で「成長力は引き続き弱い」と指摘しています。
 トラック運輸産業は、2016年度の国内貨物総輸送量の見通しによると、個人消費の低調に加え、前年度における大幅増の反動もあって消費関連貨物はマイナス、生産関連貨物は横ばい、建設関連貨物は水面下の推移が続くなど、総輸送量は0.8%減と見込まれています。また、営業用貨物自動車の見通しでは、同0.1%の微増が見込まれています。
 今回の調査は、137組合(94,283人)のご協力をいただきました。本冊子には、賃金・労働条件実態調査の結果を中心に、春闘解決内容調査、企業内最低賃金協定締結状況調査の結果も一部収録しました。
 本年の調査結果では、月額賃金(2016年6月)は加重平均(以下同様)で345,890円(前年比1.9%増)となり、6,580円の増額となりました。その内訳は、所定内賃金は前年と比べて2,806円の増額、仕事給は1,204円の減額、所定外は4,978円の増額となっています。また、労働時間は211.4時間で、近年のピークである2006年(220.9時間)より約4%減少した水準となっています。
 また、2015年の年間賃金は5,272,488円で、前年を101,425円下回りました。一方で、年間総労働時間は2,490時間(前年2,522時間)となっており、前年より減少しています。
 職種別の賃金実態をみると、本年も事務職と比較して運転職の賃金総額に占める所定内賃金の割合が低くなっており、男子事務職の所定内賃金比率78.0%(賃金総額376,697円)に対し、男子大型運転職は47.6%(同383,549円)となっています。
 また、平均年齢は、本年も前年を上回りました。厚生労働省の2015年賃金構造基本統計調査による産業全体の平均年齢は43.1歳であるのに対して、道路貨物運送業は45.6歳と、平均で2.5歳の差があります。過去の水準(2004年時点)と比較しても、産業全体が41.3歳だったのに対し、道路貨物運送業は41.7歳と0.4歳の差であり、平均年齢の格差が拡大しています。運転免許新規取得者の減少が続く中で、ドライバーの平均年齢の上昇スピードは産業全体より速まっており、労働集約型産業にとって必要不可欠な「人財」の確保のためにも、労働諸条件の改善と格差是正に向けて、より積極的に取り組まなければなりません。組合員の働きがいはもとより、魅力のある産業を実現するためには、「年間所得の引き上げ」、「賃金制度の確立・改善」、「企業内最低賃金協定の締結」、「65歳までの雇用確保」、「総労働時間の短縮と時間外割増率の引き上げ」などが求められています。
 このような労働条件を改善させ、働くものの雇用の安定、生活向上を図るのが労働組合の役割であり、春季生活闘争はそのための運動(手段)の重要なポイントとなります。来るべき2017春季生活闘争の取り組みにあたり本資料を参考にしていただければ幸いです。
 最後に、ご多忙の中、本資料の作成にご協力いただきました、各組合および地連・都府県連の皆さまにお礼申し上げ、報告とします。

運輸労連 中央本部 労働政策部