2014年度賃金・労働条件実態調査報告書の発刊にあたり

 日本経済は、国際通貨基金(IMF)によると、消費税率引き上げ後の消費の落ち込みが予想を上回る一方で、円安により輸出が緩やかながらも年後半にかけては足取りが強まる見通しであることなどから、経済成長率を0.9%と予測しています。
 トラック運輸産業も、前年度に発生した駆け込み需要の反動に加え、消費増税に伴う国内需要の減退などにより、輸送量の下押しが予測されることなどから前年同期比2.3%の減少となる見込みです。また、営業用貨物自動車の見通しでは、同1.6%の減少が見込まれています。
 今回の調査は、149組合(賃金関連項目は117組合)のご協力をいただきました。本冊子には、賃金・労働条件実態調査の結果を中心に、春闘解決内容調査、企業内最低賃金協定締結状況調査の結果も一部収録しました。  本年の調査結果では、月額賃金(2014年6月)は加重平均(以下同様)で341,155円(前年比4.7%減)となり、16,677円の減額となりました。その内訳は、所定内賃金は前年と比べて9,520円の減額、仕事給は6,291円の減額、所定外は866円の減額となっています。また、労働時間は207.1時間で、近年のピークである2006年(220.9時間)より約6%減少した水準となっています。
 一方で、2014年の年間賃金は5,425,841円で、前年を141,510円上回りました。しかし、年間総労働時間は2,539時間(前年2,514時間)となっており、前年より増加しています。
 職種別の賃金実態をみると、本年も事務職と比較して運転職の賃金総額に占める所定内賃金の割合が低くなっており、男子事務職の所定内賃金比率77.3%(賃金総額388,700円)に対し、男子大型運転職は46.4%(同383,437円)となっています。
 また、平均年齢は、本年も前年を上回りました。厚生労働省の2013年賃金構造基本統計調査による産業全体の平均年齢は42.0歳であるのに対して、道路貨物運送業は45.2歳と、平均で3.2歳の差があります。過去の水準(2004年時点)と比較しても、産業全体が40.7歳だったのに対し、道路貨物運送業は41.7歳と1.0歳の差であり、平均年齢の格差が拡大しています。運転免許新規取得者の減少が続く中で、ドライバーの平均年齢の上昇スピードは産業全体より速まっており、労働集約型産業にとって必要不可欠な「人財」の確保のためにも、労働諸条件の改善と格差是正に向けて、より積極的に取り組まなければなりません。組合員の働きがいはもとより、魅力のある産業を実現するためには、「年間所得の引き上げ」、「賃金制度の確立・改善」、「企業内最低賃金協定の締結」、「65歳までの雇用確保」、「総労働時間の短縮と時間外割増率の引き上げ」などが求められています。
 このような労働条件を改善させ、働くものの雇用の安定、生活向上を図るのが労働組合の役割であり、春季生活闘争はそのための運動(手段)の重要なポイントとなります。来るべき2015春季生活闘争の取り組みにあたり本資料を参考にしていただければ幸いです。
 最後に、ご多忙の中、本資料の作成にご協力いただきました、各組合および地連・都府県連の皆さまにお礼申し上げ、報告とします。

運輸労連 中央本部 労働政策部