2010年度賃金・労働条件実態調査報告書の発刊にあたり

 日本経済は、アジアを中心とした好調な海外経済の流れを受けて、2009年後半から輸出や生産を中心に持ち直しつつあります。また、企業収益の改善にともなう設備投資の増加や、政府の景気対策の効果による個人消費の増加など、内需にも回復の兆しはみられるものの、高水準で推移している失業率や、デフレなどの懸念材料もあり、そのペースは緩やかなものとなっています。
 トラック運輸産業は、輸出型産業にけん引される形で国内輸送量が緩やかに回復しつつも内需の盛り上がりは鈍く、荷動きの戻りは一部にとどまりましたが、収益面では燃油価格の値下がりで利益を確保したことから、2010年3月期は多くの企業で減収増益となりました。
 今回の調査には、150単組(90,179人)のご協力をいただきました。本冊子には、賃金・労働条件実態調査の結果を中心に、春闘解決調査の結果も一部収録しました。
 昨年の調査では経済危機の影響が集計結果にもあらわれて、労働時間・賃金ともに一昨年を大きく下回りましたが、本年の月額賃金は353,021円で、昨年と比べて2,500円の増額となりました。ただし、一昨年の360,043円には満たない水準となっています。賃金の内訳を前年と対比すると、所定内賃金は4,114円の減少、仕事給は4,540円の増、所定外は2,074円の増となりました。昨年に引き続き、仕事給の比率が上昇しています。
 一方で、労働時間は、6月度は1.6時間の短縮となり209時間となりました。また、年間(単純平均)でみても、2009年の時間外労働は478時間、総労働時間は2,428時間となっており、2008年の単純平均2,453時間より25時間の短縮となっています。しかし、一部の企業規模の総労働時間は、2010年6月度で220〜230時間となっており、物量の回復にともなって、再び長時間労働に戻る傾向もみられます。
 厚生労働省の賃金構造基本統計調査では、産業全体の平均年齢は2009年は42.0歳で、1989年の39.3歳から2.7歳の上昇でしたが、営業用貨物(大型と普通・小型の加重平均)は2009年は43.8歳で、1989年の38.3歳から5歳の上昇となっています。運転免許新規取得者の減少が続く中で、ドライバーの高年齢化は進んでおり、近い将来に要員不足が深刻化することが懸念されます。組合員の働きがいはもとより、トラック運転職を志す若者に魅力のある産業の実現のためにも、労働時間の短縮とともに、まずは定昇要素を持つ賃金体系を確立した上で、基本給をはじめとした固定給の比率を高め、安定した生活を送ることができる賃金体系の確立が求められています。
 このような労働条件を改善させ、働くものの雇用の安定、生活向上を図るのが労働組合の役割であり、春季生活闘争はそのための運動(手段)の一つでもあります。来るべき2011春季生活闘争の取り組みにあたり本資料を参考にしていただければ幸いです。
 終わりにあたりまして、多忙の中、本資料の作成にご協力いただきました、単組および地連・都府県連の皆さんにお礼申し上げ、報告とします。

運輸労連 中央本部 労働政策部