2007年度賃金・労働条件実態調査報告書の発刊にあたり

 厚生労働省による労働力人口の推計では、予想以上の少子化により05年推計よりも減少幅が拡大しているとしています。国立社会保障・人口問題研究所が5年に1度出す最新の将来推計人口をもとに、同省の雇用政策研究会が推計した結果、現在の傾向が続くことを前提とした場合、06年の6,657万人が17年には6,217万人に、30年には5,584万人に減少するとしています。働き手の急減で、将来の社会保障制度の維持や経済成長の持続はさらに厳しくなる見通しとなっています。トラック運輸産業では、すでに都市部を中心に労働力不足が顕著になってきており、人材の確保が今後の大きな課題となることは間違いない状況といえます。
 一方、国土交通省の発表による平成18年3月末の貨物運送事業者数は、前年より511社増の62,567社となっています。新規参入は2,115社(前年は2,243社)、撤退は1,604社(同1,015社)で、厳しい経営環境から退出する業者が増え、初めて純増が1,000社を割り込んだとしていますが、それでも結果的には事業者は増加しており、燃油価格が過去最高値を更新していることからも、厳しい経営環境は今後も続くことは確実な状況となっています。
 今回の調査には176組合(前年186組合)のご協力をいただきました。そのうち賃金項目に関する有効集約数は145組合、対象組合員数は88,695人(同90,842人)でした。集約組合を規模別でみると、大規模(1,000人以上)が13組合で対象者数は73,877人、中堅規模(300〜999人)は12組合で5,654人、中小規模(299人以下)が120組合で9,164人となっています。
 今回の集約結果の概要における全体の傾向値を前年と比較してみると、労働時間が増加しているにもかかわらず、所定内および所定外賃金の減少により、全体平均では総額賃金がわずかな減額となっています。また、10年前との比較では、1997年の380,099円に対し356,330円と約24,000円の減額(▲6.3%)となっています。さらに、本紙に掲載している数値は平均値であることから、前年との比較においては大きな差異は見られませんが、春闘や一時金交渉においては要求を見送った単組が06年より07年が上回っていることから、格差が拡大していることも推測されます。
 総論的には、依然として低位にある賃金や一時金水準などから他産業との格差は拡大傾向にあります。このような労働条件を改善させ、働く者の雇用の安定、生活向上をはかるのが労働組合の役割であり、春闘はそのための運動(手段)の一つでもあります。来るべき2008年春季生活闘争の取組みにあたり本資料を参考にしていただければ幸いです。終わりにあたりまして、多忙のなか本資料の作成にご協力いただきました、単組及び地連・都府県連の皆さんにお礼申し上げ報告とします。

全日本運輸産業労働組合連合会 書記次長 高松伸幸