2006年度賃金・労働条件実態調査報告書の発刊にあたり

 2005年度の日本経済は、緩やかながらも拡大を続けており、全体的には企業の業績も大幅に改善され、史上最高の利益を更新し5年連続の増益となっています。
 しかし、地域・業種・規模間の格差は、拡大傾向にあり二極化の進行がより顕著になっていました。
 このような中で、トラック運輸業界は、安全や環境対策費用に加え、原油の高騰など新たなコスト増を強いられ、景気の回復を実感できるまでには至っていませんでした。
 限られた物量を巡って企業間競争はさらに激化する中で、運賃・単価の低下に加え必要コストを運賃に転嫁できず、依然として厳しい環境下に置かれているといえます。
 しかし、勤労者の賃金は、長期にわたる景気の低迷やデフレ状況下において低く抑えられるとともに、年金保険料の引き上げや配偶者控除の廃止に加え、定率減税の廃止も予定されているなど、可処分所得は大きく低下しているのが実態です。
 今回の調査には、145の組合のご協力をいただきました。
 集約結果の概要における全体の傾向値を前年と比較してみると、月額賃金総額は356,882円(+946円)とわずかではありますがプラスに転じました。内訳を見てみると、所定内が△397円、歩合給などの仕事給が△318円、所定外が1,661円増となっており、時間外労働への移行傾向がうかがえます。
 これは、固定給の圧縮のみならず近年の社員雇用の抑制や正規社員以外の雇用が増えた結果、正規社員への業務負荷が高まっていることも反映していると考えられます。
 一時金においては、近年、産業内の大手と小規模の産業内格差は若干縮小傾向にありますが、産業としての平均水準は依然として低位にあり、年間所得でも減額となっており、このことが産業間格差の拡大の大きな要因となっています。
 総論的には、私たちトラック運輸産業の経営環境が依然として厳しいことから、賃金や一時金、退職金を中心とした労働諸条件が他産業水準よりいっそう低下する傾向にあります。
 少子・高齢化による労働力人口の減少が危惧される中で、どう戦力を確保するかが大きな課題となります。
 この産業の労働条件を改善させ、働く者の雇用の安定、生活向上を図り、魅力ある産業を構築するのが労働組合の役割であり、春闘はそのための運動(手段)の一つでもあります。来るべき2007年春季生活闘争の取り組みにあたり本資料を参考にしていただければ幸いです。
 終わりにあたりまして、多忙の中、本資料の作成にご協力いただきました、各単組及び地連・都府県連の皆さんにお礼申し上げ報告とします。

全日本運輸産業労働組合連合会 書記次長 高松伸幸