2005年度賃金・労働条件実態調査報告書の発刊にあたり

 2004年度の日本経済は、地域や業種にバラツキはあるものの、緩やかながらも回復傾向が続く中で、全体的には企業の業績も大幅に改善されていましたが、地域・業種・規模間の格差は、拡大傾向にあり二極化の進行がより顕著になっていました。
 このような中で、トラック運輸業界は、安全や環境対策費用に加え、原油の高騰など新たなコスト増を強いられるなど、景気の回復を実感できるまでには至っていませんでした。
 あわせて、国土交通省の発表による2005年3月末の貨物運送事業者数は、前年よりさらに1,511者増え61,040者となり、限られた物量を巡って企業間競争はさらに激化するなど、依然として厳しい環境下に置かれているといえます。
 しかし、勤労者の賃金は、長期にわたる景気の低迷やデフレ状況下において低く抑えられるとともに、年金保険料の引き上げや配偶者特別控除の廃止が実施に加え、定率減税の廃止も予定されているなど、可処分所得は大きく低下しているのが実態です。
 今回の調査には、145の組合のご協力をいただきました。
 集約結果の概要における全体の傾向値を前年と比較してみると、月額賃金総額は355,936円(−7,064円)と大幅に減少しています。内訳を見てみると、所定内が8,545円・3.6%減、歩合給などの仕事給が2,491円・4.3%増、所定外が1,010円・1.4%減となっており、総体的に成果・能力主義へ移行している傾向がうかがえます。
 これは、近年、大手を中心に進められている賃金制度の見直しの結果が反映しているものと考えられます。
 さらに、一時金の低下から年間所得でも減額となっており、とりわけ中堅規模の落ち幅が大きくなっています。こうしたことから、個別による年収ベース比較では、産業間格差においては依然として拡大していますが、大手と小規模の産業内格差は若干縮小傾向にあります。
 総論的には、私たちトラック運輸産業の経営環境が依然として厳しいことから、賃金や一時金、退職金を中心とした労働諸条件が他産業水準よりいっそう低下する傾向にあります。このような労働条件を改善させ、働く者の雇用の安定、生活向上を図るのが労働組合の役割であり、春闘はそのための運動(手段)の一つでもあります。来るべき2006年春季生活闘争の取り組みにあたり本資料を参考にしていただければ幸いです。
 終わりにあたりまして、多忙の中、本資料の作成にご協力いただきました、各単組及び地連・都府県連の皆さんにお礼申し上げ報告とします。