2004年度賃金・労働条件実態調査報告書の発刊にあたり

 勤労者の賃金は、この間の長期にわたる景気の低迷やデフレ状況下において低く抑えられ、加えて年金保険料の引き上げや配偶者控除の廃止が実施されるとともに、定率減税の廃止も検討されるなど可処分所得は大きく低下しています。
 2003年度に入り、日本経済は、地域や業種にバラツキはあるものの、ようやく長期停滞から脱しつつあり、各企業の業績は大幅に改善されています。
 しかし、トラック運輸業界を取り巻く環境は、NOx・PM法や自動車リサイクル法などの環境対策費用や原油の高騰など新たなコスト増を強いられています。
 あわせて、国土交通省の発表による2004年3月末の貨物運送事業者数は、前年よりさらに1,103者増え59,249者となっています。限られた物量を巡って企業間競争はさらに激化するなど、トラック運輸業界は依然として厳しい環境下に置かれているといえます。
 今回の調査には、132の組合のご協力をいただきました。
 集約結果の概要における全体の傾向値を前年と比較してみると、総体的に労働時間が増へ、全規模で超勤手当が増加しているにもかかわらず、月額賃金総額は363,000円(−237円)とわずかではありますが減少しています。これは、近年、大手を中心に進められている賃金制度の見直しの結果が反映しているものと考えられ、中堅・中小では、所定内賃金も超勤手当も増えた結果、賃金総額も増加しています。
 さらに、一時金の低下から年間所得でも減額となっており、大手組合の方がその幅は大きくなっています。こうしたことから、個別による年収ベース比較では、産業内格差は若干縮小したといえますが、産業間格差においては拡大している傾向があらわれています。
 総論的には、私たちトラック運輸産業の経営環境が依然として厳しいことから、賃金や一時金、退職金を中心とした労働諸条件が他産業水準よりいっそう低下する傾向にあります。このような労働条件を改善させ、働く者の雇用の安定、生活向上をはかるのが労働組合の役割であり、春闘はそのための運動(手段)の一つでもあります。来るべき2005年春季生活闘争の取り組みにあたり本資料を参考にしていただければ幸いです。終わりにあたりまして、多忙のなか本資料の作成にご協力いただきました、単組および地連・都府県連の皆さんにお礼申し上げ報告とします。

全日本運輸産業労働組合連合会
書記次長