運輸労連議員懇メンバーの松田功衆議院議員が
トラック運輸産業の人手不足の改善策、取引環境の適正化等について質疑
5月23日(金)衆議院国土交通委員会において、運輸労連政策推進議員懇談会メンバーの松田功衆議院議員(愛知16区)より、「トラック運輸産業の人手不足の現状」「標準的運賃の浸透および効果」等に関する質疑が行われました。
松田功衆議院議員:高速道路における逆走の発生件数は毎年200件程度で、うち約2割が事故に発展している。故意によるものが約2割で、残りは主に過失や認識なしが占めており、この対策を進める必要がある。2029年までに逆走による重大事故ゼロという目標実現に向け、現在実施している逆走対策の評価と今後の改善に向けた取組を伺いたい。
山本巧道路局長:より一層の対策の推進が必要と考えており、現在、民間企業からも技術提案をいただき、逆走車に対して強く衝撃を与えるような段差や、突起物を設ける技術など、今までとは異なる対策について試行を通じ、効果が確認されたものを全国的に採用する取組として進めたい。
松田功衆議院議員:是非、最新技術を導入し、即時に対応をしていただきたい。
中野洋昌国土交通大臣:今後とも逆走による痛ましい事故をなくしていけるよう、警察等の関係機関と連携するとともに、有識者にも相談しながら逆走対策に取り組みたい。
松田功衆議院議員:現状のトラック業界は、全産業より2割長く働いているにもかかわらず、給与は1.5割ほど低い状況が続いていることが一因として、人手不足の状況である。この現状を改善するための解決策について考えを伺いたい。
中野洋昌国土交通大臣:物流を持続可能なものとするため、ドライバーの労働条件改善が喫緊の課題である。そのためには、適正運賃の収受や、ドライバーへの負荷の軽減につながる物流効率化が必要である。私も、荷主業界と物流業界のトップの方々に対し、価格転嫁や賃上げの直接要請も行った。引き続きドライバーの更なる賃上げや労働環境の改善に取り組んでまいりたい。
松田功衆議院議員:固定給の割合が低く、歩合給や残業ありきの給与体系で、収入が安定しないことが一因として、トラックドライバーの担い手が集まらない状況である。加えて、事務系社員も定着率が悪く、離職者の補充ができない。一方、貸切りバスでは、事業許可更新制の導入以降、16.5%もの事業者が退出し、さらに、基準運賃の導入により事業者の収入が安定し、ドライバーの労働条件が改善した。悪貨が良貨を駆逐することがあってはならないと考えるが、トラック事業をめぐる現状に対してどのような認識か伺いたい。
中野洋昌国土交通大臣:安全等に必要なコストをかけずに、安価で仕事を引き受ける悪質な事業者への対応は重要である。トラック運送業界における多重取引の構造が改善されない背景として、遵法意識の低い事業者の存在が関係している指摘もある。過労、飲酒、点呼未実施といった安全に関する違反に対する処分量定の引上げや、業界団体による巡回指導の強化を行っているが、健全な取引環境実現のため、引き続き対策を行う必要がある。
松田功衆議院議員:何も対策を講じなければ2030年に輸送能力が約34%不足するとの試算がある。トラックドライバーの適切な賃金確保とトラック業界の質の向上を実現し、物流の停滞を発生させない更なる取組が必要と考えるが、具体的な考えを伺いたい。
中野洋昌国土交通大臣:輸送能力の不足は年々深刻化する構造的な課題であり、次期物流施策大綱の検討の中で、関係省庁とも連携し、2030年度の輸送力不足の解消に向けた更なる施策を具体化し、必要な輸送能力の確保に向けて全力で取り組んでまいりたい。
松田功衆議院議員:標準的運賃が告示され、その後、見直しが行われているが、届出状況は62%程度と決して高い数字とは言えない状況である。標準的運賃が業界全体の底上げにつながっていると考えているか伺いたい。
中野洋昌国土交通大臣:標準的運賃をおおむね収受できている運送契約数が、2023年度には50%に増加するなど徐々に浸透している。一方、実際に収受する運賃と標準的運賃で、乖離がかなりある声も伺っている。これらも踏まえ、引き続きトラック運送における取引環境の適正化等に取り組んでまいりたい。
松田功衆議院議員:現在の貨物軽自動車運送事業の従業者の運賃設定が、適正なコストが反映されているか疑問である。また、大手通販会社との業務委託内容のトラブルや、小ロット貨物輸送では値崩れが起きているとする中小事業も多数存在している。輸送の安全秩序が大きく乱れることのないように対応していただきたいと考えるが、見解を伺いたい。
中野洋昌国土交通大臣:軽貨物運送事業でも、輸送コストが適切に反映をされた運賃・料金を収受できる環境整備が当然重要である。今後、物流全体の取引環境の適正化を進める中で、軽貨物運送事業も事業の実態を踏まえ検討を進めたい。軽貨物運送事業の輸送安全確保は、2024年4月から施行した改正物流法等にて、軽貨物運送事業者に対し、安全管理者の選任や事故記録の保存、報告などの義務づけを行うなどの安全対策を強化している。国土交通省として、関係省庁や業界団体とも連携し、引き続き輸送の安全確保に加え、軽貨物運送事業を含めた取引環境の適正化にも取り組んでまいりたい。
松田功衆議院議員:特別積み合わせ貨物運送は、現行でも標準的運賃が反映しづらい事業となっており、特に宅配はその典型と言える。宅配便事業はネットワーク商品であり、全国での拠点づくりに莫大な設備投資がかかることに加え、日々、何万人にも及ぶ構内作業員や、多くの幹線輸送トラックが必要となる。真荷主や大手通販事業者が負担すべき運賃とした上で、適正な運賃の収受が図られるよう最大限の対応を求めたいと思うが、見解を伺いたい。あわせて、送料無料表記はなくすべきと考えるが、所見を伺いたい。
中野洋昌国土交通大臣:特別積み合わせ貨物運送は、事業者によって輸送単位や運送距離設定等の様々な形態があり、現在は標準的運賃を示していない。一方、高騰する運行費、人件費等の輸送コストが反映された、適正な運賃・料金を事業者が収受することは重要であるため、今後、運賃・料金の在り方は、事業者の実態を十分に踏まえるとともに、荷主側の理解も得ながら、新たな対策も含め、検討を進めてまいりたい。また、送料無料表記は改正物流効率化法第三十三条に基づく基本方針に、表記の見直しが求められている旨が明記されていることから、国土交通省として、消費者庁など関係省庁とも緊密に連携し、運送事業を所管する立場から、物流の持続的成長を図るため、国民理解の増進に取り組む。
松田功衆議院議員:中小企業庁が行っている価格交渉促進月間の調査結果では、価格交渉の実施状況、価格転嫁の実施状況とともに、調査対象の業種の中でトラック運送はほぼ最下位の状況が続いている。事業者が現行収受している運賃・料金との乖離はかなりあると想定をされる。事業者に加え、国から荷主への働きかけをこれまで以上にしていただくことが必要と考える。物流は、国民生活及び経済活動の基盤であり、トラックドライバーはエッセンシャルワーカーであるという強い決意の下、今後の政策に是非取り組んでいただきたい。
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