運輸労連議員懇メンバーの松田功衆議院議員が
「物流の2024年問題」「トラックドライバーの賃上げ」について質疑
4月23日(水)衆議院国土交通委員会において、運輸労連政策推進議員懇談会メンバーの松田功衆議院議員(愛知16区)より、「物流の2024年問題」「トラックドライバーの賃上げ」に関する質疑が行われました。内容は以下のとおりです。
松田功衆議院議員:物流の2024問題について、何も対策を講じなかった場合、輸送能力が2024年には14.2%、2030年には34.1%不足することが試算をされていたが、1年を経て、この懸念されていた輸送力不足について、大臣はどのような認識を持っているか。
中野洋昌国土交通大臣:当初は物流の深刻な停滞が懸念されていたが、政策パッケージに基づく官民での取組の成果などにより、何とか物流の機能を維持できている状況と認識している。2030年度には34.1%の輸送力が不足する見込みであり、先月開催された「我が国の物流の革新に関する関係閣僚会議」では、この2030年度までの期間を物流革新の集中改革期間と位置づけ、次期総合物流施策大綱の策定の検討を早急に開始するよう、総理からの指示があった。国土交通省として、この次期物流大綱の策定の検討の中で、2030年度の輸送力不足の解消に向けた更なる施策についても具体化を図りたい。
松田功衆議院議員:3月14日に開催された「我が国の物流の革新に関する関係閣僚会議」の資料によると、トラックドライバーの荷待ち・荷役時間は3時間から削減されていない。時間外労働規制などのルールを遵守している事業者がいる一方、そうでない事業者も多く存在しているとの指摘もある。遵守していない事業者に対して厳しい対応が必要だと考えているが、このような事業者について、どのような把握や対応を行っているか。対策を強化する考えはあるか。
鶴田浩久国土交通省物流・自動車局長:国土交通省では、厚生労働省の労働基準監督署とも連携し、この改善基準告示に違反している可能性のあるトラック事業者に対して監査を実施している。違反が事実である場合には、行政処分を実施し、厳正に対処している。
加えて、昨年10月、トラック事業における改善基準告示違反について、トラック法に基づく行政処分基準を強化し、違反件数に応じて処分の内容を重くする措置をした。引き続き、厚生労働省などの関係機関と連携しつつ、強化された行政処分基準に基づいて厳正な監査と処分を進めるなど、必要な対策を行う。
松田功衆議院議員:2024年2月16日に開催された「物流革新・賃上げに関する意見交換会」で、岸田前総理は、トラック運送業の標準的運賃を8%引き上げるとともに、荷役対価や下請手数料などの各種経費も新たに加算できる措置により、10%前後の賃上げが期待できることに加え、2023年度に向けた政府の中長期計画でも、大幅な賃上げを目指すとし、初年度賃上げ効果に推計として10%前後とされた。3月14日に開催された関係閣僚会議で示された中長期計画の進捗状況では、標準的運賃の引上げによる賃上げ効果は示されなかったが、検証は行われたのか。また、目標の10%賃上げは実現できたか。
鶴田浩久国土交通省物流・自動車局長:10%の賃上げは、昨年3月に行った標準的運賃の引上げと荷役料金の収受が実現し、また、標準的運賃が更に普及すれば、10%の賃上げにつながる見込みの下に中長期計画の目標とした。トラック運送事業における2024年1月までの現金給与総額は、厚生労働省の毎月労働統計調査によると、前年度と比較して1.24%の上昇に留まっていることから、標準的運賃の更なる浸透が重要な課題である。
現在、政府で賃上げ支援と価格転嫁の実現に取り組んでおり、今月には国土交通大臣からもトラック業界に対して価格転嫁や賃上げ要請を行った。また、昨年3月に改定した標準的運賃にて、今年の3月からトラック運送事業者等に対し効果検証に向けた実態調査を始めている。この結果も踏まえ、物流全体の取引適正化に向けて、今後も継続的に必要な見直しを講じてまいりたい。
松田功衆議院議員:賃上げについて、他産業では大幅な賃上げ報道がされているが、トラック運輸産業は、春闘でのゼロ回答や低額妥協を余儀なくされている所も多い。また、現在多くの企業では、ドライバーだけでなく、営業職や事務系社員の人材流出が続いている。2025年2月の自動車運転従事者の有効求人倍率は2.71倍と、大変高い倍率となっており、この状況を放置すれば、物流危機が現実となってしまう。国として危機感を持って賃金などの労働条件を改善する必要があると考えるが、大臣の見解をお伺いしたい。
中野洋昌国土交通大臣:トラックドライバーは、全産業平均に比べて労働時間が2割長く、年間賃金が1割低い。人手不足を解消して物流を持続可能なものとするためにも、私も、労働条件の改善が喫緊の課題であると強い意識を持っている。トラックドライバーの労働条件改善のためには、やはり、ドライバーの賃上げの原資となる適正運賃の収受や、ドライバーの負荷軽減につながる物流の効率化が必要である。
標準的運賃について周知・浸透させ、また、荷主等に対して、トラック・物流Gメンの是正指導を行い、適正運賃を収受できる環境の整備や、本年4月に施行された改正物流法、あるいは先月閣議決定された下請法の改正法案を契機とし、トラックドライバーの運送、荷役等の効率化に向けた取り組みを更に進めてまいりたい。
松田功衆議院議員:トラックドライバーの賃金の原資となる運賃について、2024年9月の中小企業庁調査によると、トラック運送業は、価格交渉の実施状況の業種別ランキングで30業種中最下位、また、価格転嫁の状況の業種別ランキングでも同じく最下位である。価格交渉・転嫁ともに最下位というのは、一企業、一産業だけでは解決できる領域を超えている。
トラック運送業では、運賃交渉力の弱いトラック事業者の適正な運賃収受を支援するため、2018年、貨物自動車運送事業法の改正により、標準的な運賃の告示制度が導入された。
国土交通省が行った2023年度の実態調査の結果を見ると、標準的運賃以上に収受できている事業者は20.1%で、適正な運賃を収受できている事業者はまだ少ない状況である。この状況を改善するため、標準的運賃について法的根拠の付与を検討すべきと考えるが、大臣の見解を伺いたい。
中野洋昌国土交通大臣:2023年11月に発出した「労務費の転嫁指針」において、標準的運賃がトラック運賃の価格交渉で使用すべき根拠資料の例として明記をされた。この流れをより一層強化するため、引き続き標準的運賃の周知啓発に取り組んでいきたい。
さらに、2024年8月から「多重取引構造の是正に関する検討会」を開始させていただいた。多重取引構造が改善されない背景として、安価で安く条件の悪い仕事を引き受ける事業者の存在も指摘されている。この状況を改善するため、どのような方策を講じるべきか、関係者の意見も踏まえ、引き続き検討を深めたい。
松田功衆議院議員:例えば標準的運賃を著しく下回る金額での契約は無効にするなどといった対策を考えていただきたい。
松田功衆議院議員:再配達削減について、再配達率を12%から6%に半減することが目標とされている。2024年10月からポイント還元実証事業が実施されたが、同月時点で再配達率は10.2%で、半減実現に向けた道のりは厳しい。
3月14日開催の関係閣僚会議における資料でも、再配達削減は試算よりも実績が大きく下回っている。再配達半減に向けたポイント還元実証事業について巨費が投じられたが、必ずしも効果が出ていない。
改めて、荷主や消費者の行動変容、意識改革に向けた国の施策が必要と考えるが、この事業の結果についてどのように評価しているか。また、現状認識と再配達削減に向けた今後の施策の展開について伺いたい。
鶴田浩久国土交通省物流・自動車局長:ポイント還元実証事業の結果については、置き配希望者に対し、最大3.1%再配達率が低下。一回で確実に受け取った人に対し、最大1.2%再配達率が低下した。
この結果を踏まえ、国土交通省では、今年4月を再配達削減PR月間と位置づけ、約170団体の自治体、事業者等と連携しながら、消費者への呼びかけを行っている。
具体的には、先ほどの結果も踏まえ、再配達削減PR月間では、置き配や宅配ロッカー、コンビニなど対面以外での受取方法を選択することや、宅配事業者が提供している会員サービスを活用し、確実に受け取れる日時、場所を指定すること、この二点を重点的に呼びかけている。引き続き、自治体や事業者、関係省庁と連携し、消費者の意識改革、行動変容を促して、再配達率削減に取り組んでまいりたい。
松田功衆議院議員:1999年の物流2法制定による規制緩和の結果、トラック事業者数が大きく増加したことなどにより競争が激しくなり、事業運営が厳しくなった。これにより、トラックドライバーの方々の労働環境が大変厳しくなり、現状を招いていると言える。
昨年成立した改正物流法の附帯決議では、「トラックドライバー賃金の全産業平均並みの引上げができるよう、必要な措置を講じる」とされた。トラックドライバーの賃上げを実現するため、必要な施策を国として早急に講じなければ、日本の物流は維持できないと考えるが、大臣の見解を求めたい。
中野洋昌国土交通大臣:政府全体で賃上げ支援を強力に推進しており、構造的な価格転嫁の実現に取り組んでいる。先月、総理の下でトラックドライバー等との車座対話が開催され、私自身も、ドライバーや事業者の方々から、「賃上げを進めているが、価格転嫁は引き続き厳しい状況である」という現状や、「荷待ちや荷降ろし等の負担軽減には、更なる商慣行の是正も必要」という現場の声も直接伺った。こうした声も踏まえ、トラックドライバーが魅力のある職業となり、物流の持続性が向上するよう取り組んでまいりたい。
松田功衆議院議員:労働条件の改善等々、関係閣僚会議でしっかりと議論を行い、賃金底上げに是非お力をいただきたい。
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