枝野幸男衆議院議員(立憲民主党前代表)が
「標準的な運賃」「送料無料表示」について質疑


2023年3月29日(水) 衆議院国土交通委員会

 3月29日(水)衆議院国土交通委員会において、立憲民主党前代表である枝野幸男衆議院議員(埼玉5区)より、「標準的な運賃」および「送料無料表示」に関する質疑(下記要旨)が行われました。

枝野幸男衆議院議員:物流業界では人手不足が深刻な問題となっている。この状況の中で、「働き方改革」がトラックドライバーの皆さんにも適用されることとなり、物流関係の人手不足が社会全体の問題になる局面を迎えつつある。トラックドライバーなどの物流の人手不足は、全産業平均より長時間労働かつ低賃金であることに本質的な問題があると言われているが、大臣の認識をお聞かせいただきたい。

斉藤鉄夫国土交通大臣:エッセンシャルワーカーのトラックドライバーは、社会にとって重要な役割を担っているにもかかわらず、平均給与は全産業平均よりも低く、労働時間も長時間にわたっている現状に大きな原因があると思っている。

枝野幸男衆議院議員:トラックドライバーの低賃金の原因は、運送料金が低く抑えられており、賃金に相当する部分が価格転嫁できていないことに問題があるという指摘もある。貨物自動車運送事業法に基づいて令和2年の4月に「標準的な運賃」が告示されたが、どの程度効果を上げているのか。

斉藤鉄夫国土交通大臣:令和3年度末に国土交通省が実施したアンケート調査では、約半数の事業者が「標準的な運賃」を用いて運賃交渉を行ったとの結果が出ている。また、標準的な運賃を用いた交渉の結果、このうち約3割が荷主から一定の理解を得られたとの結果が出ているが、私自身はもう少し効果が出てもいいのではないかと思っている。

枝野幸男衆議院議員:交渉した結果、全体の15%しかこの標準的な運賃に順じていないのであれば、残りの85%は国土交通省が標準的と判断している水準に達していないことになるが、このままではいけないのではないか。

斉藤鉄夫国土交通大臣:このままではいけないと思っており、国土交通省をはじめ内閣を挙げて様々な努力をしているところである。

枝野幸男衆議院議員:「標準的な運賃」は人件費等も含めた様々なコストを計算して作られているが、この1年で燃料代が大幅に上昇したほか、人件費も働き方改革で一人当たりの労働時間を短くせざるを得なくなる。この2つの点で考えると、「標準的な運賃」を大幅に上げなければいけないと思うが、どのように考えるか。

斉藤鉄夫国土交通大臣:「標準的な運賃」における指摘の点について、現時点でこういうふうにするという計画はないが、これからしっかり議論をしていきたい。

枝野幸男衆議院議員:大事な所であるので念押ししたい。間違いなくこの1年間で燃料は大幅に上がり、これは「標準的な運賃」を計算する上のベースになる、大きいところである。一方で、働き方改革の効果もあり、ドライバーの皆さんなどの賃金を上げる必要がある。このような状況から、できるだけ早く大幅に標準的な運賃を上げていただきたいということを強く大臣にお願いしたい。

斉藤鉄夫国土交通大臣:検討させていただきたい。

枝野幸男衆議院議員:「標準的な運賃」の交渉は、民間企業同士の契約のため、どの範囲まで強制力を持たせるのかということは簡単ではないと理解しているが、具体的に何をされるつもりなのか幾つか挙げていただきたい。

斉藤鉄夫国土交通大臣:荷主団体や経済団体の皆さんに、「標準的な運賃」の制度や、物流業界が置かれている現状を理解いただき、価格転嫁がしやすいような状況を作る努力をしている。

枝野幸男衆議院議員:努力の1つとして急いでやっていただきたいのは、ネット通販等で溢れている「送料無料」表示の問題である。実態として、送料は売主側負担であり無料ではないが、消費者は運送が無料で行われていると勘違いする。送料無料表示がネット通販のベースとなると、送料を安く抑えるのが売るための一つのポイントになり、同時に運送会社に対して運送料を安く抑えろという圧力の基になる。送料無料表示はやめさせるべきだと思うが、どのように思われるか。

斉藤鉄夫国土交通大臣:国土交通省として、通販事業者に対する指導等を行う立場にはないが、運送事業者が適正運賃を収受できないことは大きな問題であると考えている。送料無料表示が適正運賃の収受の妨げになっているとの指摘があったが、令和3年6月に閣議決定された総合物流施策大綱の中で、「商取引において、物流業務は無償で提供されていると誤解を招くかのような表現は見直しが求められる」とされている。国土交通省として、関係省庁と連携してこの問題に取り組んでいきたい。

枝野幸男衆議院議員:消費者庁へ質問させていただきたい。現状の送料無料表示問題についての見解等や、消費者庁としてできることはないか。

消費者庁担当官:我々が所管している景品表示法という法律があり、その中の一つに、取引条件等について、著しく有利であると一般消費者に誤認されるような表示を規制している。ただ、送料無料と表示された商品について、商品の代金と一般消費者が実際に支払う代金に齟齬がなければ、この法律上の問題とすることは難しい。消費者庁でできることは、消費者が送料無料表示を目にしたとき、そこに物流コストが生じていることを理解した上で、合理的な消費行動を行うことが望まれると考えており、今後、関係省庁と連携し、消費者の理解が進むよう普及啓発に努めたい。

枝野幸男衆議院議員:消費者庁の消費者保護という観点からは難しいということであれば、経済産業省に質問したい。ネット通販は広い意味で経済産業省が所管と思うが、送料無料表示はやめさせるべきではないか。

経済産業省担当官:物流コストの認識の低さ、例えば、再配達や小ロットでの発注による積載効率の低下が、物流に非常に負荷をかけている状況と承知している。この状況を改善するため、物流を支えている皆様の受け取る対価が適正なものとなるよう、荷主企業や消費者の認識向上が重要と考えている。経済産業省では国土交通省や農林水産省と連携し、「持続可能な物流の実現に向けた検討会」を行っており、その中で、不適切な商慣習の是正や物流の効率化に向けた環境整備等の、構造的な改革に加え、荷主企業や消費者の認識の向上に対する取り組み等、実効性のある措置を検討している。これらの取り組みを通じ、持続可能な物流の実現に向けて万全を期してまいりたい。

枝野幸男衆議院議員:トラックドライバー不足により、現状の物流量を確保できないという民間の試算もあり、あまり時間がないと思っている。ネット通販は、大手の寡占に近い状態にあり、大手2、3社に対し行政指導を強力に行えば相当変わると思われるため、是非実行していただきたい。もし、対象となる所が外資企業のため対応が難しいのであれば、法律を作るべきと考えるが、大臣はどのように思われるか。

斉藤鉄夫国土交通大臣:今ここで法律を作るとは言えないが、この問題の根深さを非常に感じている。誤解を招く表現が、今の物流事業者の待遇や、物流業者の長時間労働につながっているという認識の下に、我々もしっかり対応していきたい。



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