運輸労連議員懇メンバーの鬼木誠参議院議員が
「宅配便を中心とする規制緩和」について質疑


2023年3月9日参議院国土交通委員会

 運輸労連政策推進議員懇談会メンバーの鬼木誠参議院議員(比例)が3月9日(木)、参議院国土交通委員会において「宅配便を中心とする規制緩和」に関する質疑が行われました。

鬼木誠参議院議員:新型コロナウイルス感染症の拡大以降、通販の利用増加などもあり、宅配便などの利用が急増している。配送サービスは、トラック運送事業者が中心であったが、最近では軽貨物事業者(いわゆる黒ナンバー)が増えている。軽自動車による宅配便等の運送は、個人事業主の届出だけで事業を始められることから、新規参入がしやすく拡大傾向にある。これに伴い、黒ナンバー車が原因で死者あるいは重傷者が出る重大事故が増加しており、警察庁の交通事故データでも、事故総数は減少している中で黒ナンバー車による事故が増加していると分析されている。黒ナンバー車による交通事故の発生件数の動向について、警察庁の方へ伺いたい。

※事業用の軽貨物自動車が第一当事者となった交通事故件数について、警察庁担当官より下記の報告があった。
平成30年 令和元年 令和2年 令和3年 令和4年
3,968件 3,977件 4,051件 4,616件 5,012件

鬼木誠参議院議員:運転経験3年未満の方の事故割合が年々増加しているという全国紙の新聞記事があった。運転経験の浅さや、請け負う荷物が多過ぎる、あるいは休憩時間の取得や労働時間など労務管理が適正になされていないことが事故の原因として考えられる。運送会社に雇用されたドライバーは、労基法に基づいた労務管理が必要となるが、運送会社と業務委託契約を結んで配送する個人事業主の場合は、雇用契約ではないために労基法の適用とならない。また、軽貨物事業者の場合は、運行管理者の選任や運輸局への事故の報告義務、乗務の記録義務がなく、自主的な管理となっている。
 個人事業主であっても、運転者は運転時間等基準告示を守らなければならない。黒ナンバー事業者も、貨物自動車運送事業法や貨物軽自動車運送事業輸送安全規則によって一般の事業者とほぼ同様の責任が課せられているが、これらの周知が進んでいないか、曖昧になっているのではないか。
 加えて、緑ナンバーで営業をする事業者は、法で定められた事項に違反をした場合には業務停止処分も受ける。当然、黒ナンバー事業者にも同様な法令遵守が求められるが、正確に理解されているか疑問を持たざるを得ない。改めて、これらの法令の周知あるいは監査や指導の徹底が図られるべきと思うが、国交省の考えを伺いたい。

堀内丈太郎自動車局長:指摘のとおり、コロナ禍の中でのEコマース利用増加などにより、急速に貨物軽自動車運送事業者が増えている。これに伴い、事業用軽貨物自動車事故の増加も認識しており、非常に大きな問題だと考えている。
 そのため、国土交通省として、昨年10月、貨物軽自動車運送事業者に対し、個人事業主の場合であっても自ら運行管理を実施することは必要であること、運転者の過労運転を防止するため、運転者の適切な労務管理や健康管理を行うこと、道路交通法の規定を確実に遵守することなどを徹底するよう、改めて周知を図ったところである。
 さらに、本年1月、関係省庁や貨物軽自動車運送事業に運送を依頼する荷主や元請運送事業者などから成る協議会を初めて開催した。荷主や元請運送事業者からも貨物軽自動車運送事業者に対し、輸送の安全や労働時間のルールなどに関する法令遵守を徹底するよう周知の協力を依頼したところである。
 引き続き、貨物軽自動車運送事業者に対する指導などを通じて、事業用軽貨物自動車に係る事故防止を図っていく。

鬼木誠参議院議員:様々な取り組みが行われているが、黒ナンバーの対面点呼は、運行管理資格がない従業員でも対応が可能である。該当する事業者の方へ、安全管理のために国家資格である運行管理資格の取得を義務付けることは難しいと思うが、例えば、少なくとも事業開始をする際の初任運転者の適性診断や、年に1回の研修を義務付けること、更にこれらを徹底するための新たな方策も御検討いただきたい。

堀内丈太郎自動車局長:貨物軽自動車運送事業者について、事業の状況や運行管理の実施状況などの実態調査を行っている。この調査結果や事業用軽貨物自動車の事故原因の分析などを踏まえ、貨物軽自動車運送事業者の安全確保のため、初任運転者への適性診断の実施あるいは運行管理者講習への参加なども含め、必要な対策を検討していく。

鬼木誠参議院議員:昨年10月、軽乗用車について、貨物軽自動車運送事業のように供することを可能とするという通達が発出され、申請をすれば自家用の軽乗用車で宅配サービスを行うことが可能になった。参入のハードルが低くなったことにより、副業やアルバイトなど新規参入が今以上に急増し、事故や働き方の課題が拡大することを懸念している。また、軽乗用車による宅配サービス参入を求めたのは政府の規制改革会議であるが、この会議の中で、将来的には個人のマイカー(白ナンバー乗用車)による貨物配達を可能とする議論をしていると伺っている。
 ギグワーカーとして宅配便等のラストワンマイル配送を個人のマイカーで行うことが可能となると、事故の増加に加え、様々な課題が惹起され、労働面や安全面の問題に留意した取り組みが必要になると考える。安全・安心を置き去りにした規制緩和は大問題だと指摘をせざるを得ない。このような規制改革会議の議論や方向性について、大臣はどのような所感をお持ちか伺いたい。

斉藤鉄夫国土交通大臣:輸送の安全を確保することが運送事業では大前提である。
 現在、他人の需要に応じて有償で自動車を使用して貨物運送する場合、貨物自動車運送事業法に基づき、輸送の安全を確保する観点から、審査を行った上で許可しており、自家用車で他人の荷物を有償で運送することは原則として認めていない。
 一方、運送需要が極端に増大する年末年始、夏期等の繁忙期に限って、道路運送法の規定に基づく自家用有償運送の許可を行い、安全を確保した上で自家用車の活用を例外的に認めている。そして、この例外的な許可の在り方は、昨年6月に閣議決定された規制改革実施計画にて、ニーズ等を踏まえ、必要な措置を検討し、結論を得ることとされた。国土交通省として、輸送の安全を確保することを大前提に関係者と適切な制度運用のための議論を行いたい。

鬼木誠参議院議員:安全性を最大確保するために何が必要か、是非とも検討をお願いしたい。効率性のみを追求し、安全・安心をないがしろにする規制緩和は認めるべきではない。もう一つ強く懸念をしているのは、緑ナンバーのトラックドライバーの働き方改革への影響である。配達個数を多くし、長時間労働で稼ぐ個人事業主のドライバーが増えた場合、競争が激しくなり、緑ナンバーのトラックドライバーの労働時間がさらに増加し、あるいは価格競争によって運賃が下がり、それが賃金の低下・削減につながることを懸念している。
 トラック運送業者で働くドライバーは、来年の4月から時間外労働の上限が年960時間までとなるなど、労働環境の改善が進められてきた。運賃も、改正貨物自動車運送事業法により来年度末まで標準的な運賃告示制度が時限的に行われ、適正な運賃収受によるトラックドライバーの賃金への反映が期待されている。このようなトラックドライバーの働き方改革が、新規の個人事業主の参入によりマイナスの影響になってはならない。
 国土交通省は、安全が第一に必要ということを大前提とした上で、安定した物流の確保のため、賃金・労働条件の改善、人手不足の解消に向けて尽力いただきたい。そのために、規制改革に安易に追従せず、規制すべきところは規制する強い決意を持った取り組みをお願いしたい。職場環境の改善をこれからも進めていくことや守ることが、2024年問題あるいは物流クライシスの回避にもつながると考えている。もう一度、大臣の考えを聞かせていただきたい。

斉藤鉄夫国土交通大臣:2024年問題により物流への影響が懸念されていることから、取引環境の適正化などを通じた担い手の確保、生産性の向上が喫緊の課題となっている。特に、物流の担い手であるトラックドライバーは、労働時間が長い上、低賃金にあることから、担い手不足となっており、荷待ち時間の削減や適正な運賃の収受等による労働条件の改善が急務であると認識している。このため、国土交通省として、貨物自動車運送事業法に基づき荷主等に対する働きかけや要請などに取り組むとともに、ホワイト物流推進運動の展開や、荷役作業の負担軽減に資する機械等の導入支援などの働き方改革に関する取り組みを推進し、労働条件の改善や業界の魅力の向上を図っている。加えて、物流DXやモーダルシフトなどによる輸送の効率化にも取り組んでおり、物流の生産性の向上を図っている。
 国土交通省として、引き続きこうした取り組みを強力に推進し、2024年問題に対応していきたいと考えている。

鬼木誠参議院議員:トラックドライバーの担い手不足を解消するために、労働条件の改善が急務と思っている。引き続き強い決意を持ってこの取り組みを進めていただき、職場環境の改善や安全な輸送・運送を確保していくために最大限の努力を行っていただきたいことを重ねてお願いする。



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