交運労協第26回交通運輸政策研究集会において
「白トラック」拡大への反対意見を表明


 6月30日(水)、コロナ禍の影響で2年ぶりとなる、交運労協第26回交通運輸政策研究集会が田町交通ビルにて開催されました。
 コロナ禍の影響等により半日開催となった今回の主たるテーマは、旅客交通や観光サービス産業がコロナ禍においてより大きな影響を受けていることから、「ニューノーマル時代における交通運輸・観光サービス産業の確立にむけて」のパネルディスカッションでしたが、その中で、トラック運輸産業からの現況報告等を求められる場面があり、運輸労連・福本明彦中央書記次長から次の発言がなされました。
 「コロナ禍により、全体的に仕事量は減っているものの、依然として慢性的な労働力不足の状況にあり、その有効求人倍率は、コロナ禍においても全産業のほぼ2倍を維持し続けている。こうした中、次期『総合物流施策大綱』では、労働力不足への対策とあわせて、物流DXや物流標準化により、省力化を進める一方で、『自家用トラックの活用』が挙げられている。その背景として、通販業界を中心に、主に軽貨物における自家用トラックによる有償貨物輸送の規制緩和を求める声が上がっており、この9月1日には、一部を緩和する通達が出される予定である。国土交通省は、輸送安全の確保やドライバーの適切な労務管理などを前提に、貨物自動車運送事業法の事業許可を得ている事業者の活用に限定したいとの意向も示しているが、現状、通販貨物を配送している軽貨物事業者については、一般貨物自動車運送事業と比較して安全管理や労務管理の法規制等が緩いことから、長時間労働の割に低収入という、これまでのトラック運輸産業の悪しき状況が再燃しはじめている。自家用トラックの活用が拡大すれば、改善に向かっている業界、とくに宅配事業に、再び運賃低下等の悪影響を及ぼす、業界の秩序を再び乱すことになるのではないかと危惧している。また、白ナンバーのトラックが飲酒運転により小学生を死傷させるという、大変痛ましい事故が起きたが、青ナンバーでは当たり前となっているアルコールチェックがなされていないという、白ナンバーの安全管理の問題が露呈した。このような不幸な事故を再発させないことも含め、トラックのみならず、白タク、白バスの問題とあわせて、交運労協として、改めて課題を整理し、強力に訴えていく必要があると考える。ITFの国際会議においては、各国から、ギグワーカーの拡大による輸送安全や運賃水準の低下の報告があったが、日本も例外ではなく、輸送の安全はもとより、労働環境の維持・向上をしていくためにも、交運労協が中心となって、行政をはじめ、関係各所に強力に訴えていくとともに、青ナンバーの重要性を訴え、世論を喚起していくことが必要ではないかと考える。」
 これに対し、パネリストとして参加していた桜美林大学・戸崎肇教授からは、「人流(旅客輸送)の白ナンバーについては、課題が明らかになっており、論議が進むと思われるが、物流については宅配事業が活況を呈しており、類似するフードデリバリーが良くも悪くも活躍している状況もあるため、社会的関心を引きにくいと思われる。物流の課題をどのように公的に訴え、議論につなげていくかが重要ではないか」とのコメントがありました。
 交運労協からは、パネルディスカッション全体のまとめとして、物流・人流ともに共通の課題も多く、双方が、ニューノーマル時代において持続可能となるよう取り組んでいきたいとする旨の発言がありました。
 「自家用トラックによる有償運送」の拡大については反対の立場で臨むとともに、軽貨物のマッチング配送への対応と合わせて、行政、事業者団体等と適宜協議しながら対応していきます。


発言する福本中央書記次長

パネルディスカッション風景

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