運輸労連議員懇メンバーの松田功衆議院議員が
「電動キックボードのシェアリングサービス事業(公道実証実験)」について質問


 

 運輸労連政策推進議員懇談会メンバーの松田功衆議院議員(比例東海)が、4月21日(水)国土交通委員会において、運輸労連が取り組んだ「自転車および中食デリバリーの危険走行に関するドライバーアンケート」の結果に鑑み、産業競争力強化法に基づく経済産業省の新事業活動計画として実施される「電動キックボードのシェアリングサービス事業(公道実証実験)」に関する質疑を行いました。

◆松田議員から以下のような質問・意見等が行われました。

1.警察庁の「多様な交通主体の交通ルール等の在り方に関する有識者検討会」における電動キックボードの公道走行時の安全性に関するヒアリングについて、推進したい運営会社やメーカー等からのヒアリングのみであり、安全性を検討するには問題があるのではないか。日常業務として道路を走っているトラックやバス・タクシーの事業者団体やドライバーからもヒアリングをすべきと考える。

2.令和3年4月8日、警察庁から各都道府県警に出された「電動キックボードに係る産業競争力強化法に基づく特例措置について」という通達では、当該新規事業活動を実施する区域内の道路において、この事業に従って貸し渡された電動キックボードについては、自転車レーン等の通行や、ヘルメットなしで通行することが可能になるとし、その条件として、最高速度15q以下とし、実施区域に「交通が著しく頻繁な道路」を含まないこととしているが、「交通が著しく頻繁な道路」とはどのような道路を指すのか。また、実施区域内に当該の道路があった場合、その道路を横断する時はヘルメットを着用させたり、自転車レーンではなく車道を走るよう条件づけるのか。あるいは、特例措置の許可をしないのか。

3.警察庁の電動キックボードの走行実験結果において、自動車運転免許の保有の有無による違反行為の回数を示したデータでは、年代別でも違反行為別でも、免許を持っていない人が持っている人に比べて違反回数が多いにもかかわらず、「運転免許を受けている者とそうでない者とで点数にさほどの差が見られなかった」「一部の項目を除き、運転者の運転行動に全体的に大きな差はない」と結論づけているが、実験結果について正しく検証し、その上で、いかに道路を使用する全ての交通全体が安全に快適に走行できるかを考えるべきである。

4.警察庁が実施した新たなモビリティーに対する国民の意識や意見に関するアンケート調査では、電動キックボードを運転する際に、ヘルメットを着用しなくてもよいと考える人は約2割にとどまっており、安全面からは問題があると考える。

◆上記質問・意見等に対し、警察庁の担当官から以下のような回答が行われました。

1.検討会は、電動キックボードを始めとする新たなモビリティーに係る安全性や利便性について詳細に分析するとともに、専門家の意見を聞きながら、新たな交通ルールの在り方を幅広く検討することとしている。具体的には、道路工学の専門家や車両安全の専門家、日本身体障害者団体連合会や日本PTA全国協議会に参加いただくとともに、道路を通行する他の交通主体の意見を反映させるため、自動車ジャーナリストや日本物流団体連合会にも参加いただき、新たなモビリティーの安全性や利便性について、指摘のあった製造事業者やシェアリング事業者、これを活用したい地方自治体に対してヒアリングを行ってきた。 今後の検討会におけるヒアリング団体等については検討中であるが、幅広い分野の意見を伺い、多様な交通主体の全てにとって道路における安全性と快適性の調和が成り立つよう、新たな交通ルールの検討を行っていきたい。また、トラックやバス・タクシー等の事業者、ドライバーの意見については、ヒアリング対象団体について検討したい。

2.「交通の著しく頻繁な道路」は、基本的には、国土交通省が実施した平成27年度全国道路・街路交通情勢調査、一般交通量調査の結果、24時間自動車類交通量が4万8千台を超える道路を指すこととしており、具体的には、東京都内の環状七号線などが該当する。 仮に、新事業活動を実施する区域に当該の道路が含まれていた場合には、新事業活動計画は認定されないこととなるが、今回の認定申請に当たっては、事前に、特例を受けようとする事業者側と実施区域について調整を行っており、「交通の著しく頻繁な道路」が含まれることは想定していない。

3.走行実験については、電動キックボードの運転者の運転行動を検証するため、運転免許を受けている者50人と運転免許を受けていない者50人による電動キックボードの走行実験を行い、15項目の違反について分析したものである。結果について、指定場所不停止、信号無視、右側通行の3項目について、運転免許を受けている者と受けていない者との間で違反の状況に一定の差が見られたが、これらは専ら交通ルールに関する知識の差が要因となっているものと評価している。その他の12項目については、おおむね差は小さく、全体的には運転免許の有無で運転者の運転行動に大きな差はなかったと評価している。今後については、運転者が確実に交通ルールを認識し遵守するよう、販売事業者やシェアリング事業者による交通安全教育の在り方について検討していきたい。

4.アンケート調査については、運転免許を受けている者1,736人と受けていない者500人から回答を得たものである。その結果としては、指摘のとおり、電動キックボードについて「ヘルメットを着用していなくとも運転してもよいと考える」と積極的に回答した者は、全体の約2割であった。自転車や原動機付自転車等の乗用者が頭部を受傷する交通事故において、ヘルメットが致死率を大幅に減少させることができることは統計上明らかであり、警察としては、電動キックボードの運転者についてもヘルメットを着用することが望ましいと考えている。一方で、ヘルメット着用義務の緩和を求める声が一定程度あることを踏まえ、今回の新事業活動では、ヘルメットの着用を推奨しつつ、電動キックボードの最高速度を、一般的な自転車と同様の速度である15q/hに制限すること、また、新事業活動の実施区域には「交通の著しく頻繁な道路」を含まないことから、一定の安全性は確保されているものと認識している。  

 その後、赤羽国土交通大臣から「安全性が最優先であると考えているが、他方で、全国の地方都市では、少子高齢化、人口減少化の中で、公共交通の維持が大変難しくなっており、感染症の拡大による非接触という課題も出てきている。その中で、ICTやAIといった新技術を組み合わせた、公共交通とそれ以外の移動サービスを組み合わせた一つのサービスとして、MaaSの実証実験を行っており、経産省と連携してスマートモビリティチャレンジ事業と位置づけている。例えば、電動キックボードについては、環境負荷が低減されるということや、パーソナル性の高い新たなモビリティーということで、欧米の各都市では、観光地も含めて移動手段として活用されている事例があり、日本においても、観光地における第二次交通手段としての活用もあり得ると考えているが、車道と歩道のみで専用道がないということについては、現行、自転車だけでもかなりの問題が起きており、そうしたことは整理しなければいけないと考える。安全の確保は大前提であり、国交省としては、今般、警察庁の有識者検討会で取りまとめられた方向性を踏まえながら、電動キックボードなどの活用も含めたMaaSの普及をどのように促進するのか、移動しやすい環境をどのように整備していくのかということをしっかりと検討しながら、安全性が損なわれることのないよう、着実に進めていきたい」との答弁がありました。

 最後に松田委員から「検討会の中間報告書の設立趣旨には、『歩行者や車両などの多様な交通主体の全てにとっての道路における安全性と快適性の調和の上に確立されているものでなければならない』と書かれており、貨物事業者や道路運送事業者からもヒアリングを行い、全ての交通主体が安全に通行できるようなルール作りをお願いしたい」と述べられました。


   

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