運輸労連は4月3日(月)、「働き方改革実行計画」の取りまとめを受け、厚生労働省と国土交通省、全日本トラック協会に対し、自動車運転の業務への時間外労働の上限規制に関する要請行動を実施しました。


2017年4月3日

厚生労働大臣 塩崎 恭久 様
国土交通大臣 石井 啓一 様
公益社団法人 全日本トラック協会 会長 星野 良三 様

「トラックフォーラム」      

全日本運輸産業労働組合連合会
中央執行委員長 難波 淳介(公印)

全国交通運輸労働組合総連合
中央執行委員長 山口 浩一(公印)

 

自動車運転の業務への時間外労働の上限規制に関する要請について

 3月28日、第10回働き方改革実現会議でとりまとめられた「実行計画」において、長時間労働の是正に向け、労働基準法に時間外労働の上限規制が罰則付きで定められるとともに、現行の限度基準告示で適用除外とされてきた自動車運転の業務についても適用する、とされたことに対して感謝を申し上げます。  
 しかしながら、同業務については、一般則の施行より5年遅れで年960時間(月平均80時間)以内の規制を適用することとし、単月100時間未満、2〜6か月平均80時間の規制の対象外とされました。さらに、休日労働の取り扱いでは、一般則の年間の上限720時間では別枠とされているものの、上記の960時間では含まれているか否かについての明記がありません。そのため、休日労働が960時間の別枠で取り扱われ、時間外労働と休日労働を拘束時間に置き換えた場合、現行の自動車運転の業務に対する労働時間等の規制である改善基準告示と何ら変わらない水準が維持され続けることとなります。  
 過労死等の現状を見れば、自動車運転従事者(職種)、道路貨物運送業(業種)はともに「脳・心臓疾患の支給決定件数」ワースト1位となっています。この実態を鑑みれば、自動車運転の業務こそ長時間労働の改善に向けて最優先に取り組まなければならない職種であると考えます。もし現状が容認されることとなれば、長時間労働是正を目指してきた「働き方改革」の意義は失われてしまいます。  
 つきましては、長時間労働が常態化するトラック運送事業で働くドライバーの厳しい労働環境の改善に向け、「時間外労働の上限規制」について下記の項目が実現されるよう、要請いたします。

 

1.物流システムの維持に向け、年間の時間外労働の「上限規制720時間」の適用

 物流システムはドライバーという「人」によって成り立っている。しかしながら、長時間労働が常態化し、過労死等労災の多い労働環境では、若年者のなり手は非常に少なく、ドライバー平均年齢の上昇とともにドライバー不足による物流システム維持不能が現実のものとなりつつある。  
 したがって、「トラック輸送における取引環境・労働時間改善中央・地方協議会」での改善策の水平展開等のための準備期間や、東京オリンピック・パラリンピック開催への対応も考慮して、自動車運転の業務の施行時期が一般則の施行の5年後となることは致し方ないが、ドライバー職の長時間労働の是正で労働環境を整備し、運転手不足を改善するためにも、「上限規制960時間」とする時間外労働については、一般則の時間外労働の「上限規制720時間」を適用されたい。

2.過労死水準を根拠とした規制である「単月100時間」「2〜6か月平均80時間」の適用

 安倍総理は2月1日の第6回働き方改革実現会議の席上で「誰に対して何時間の上限とするかを決めるに当たっては、脳・心臓疾患の労災認定基準、いわゆる過労死基準をクリアするといった健康の確保を図った上で」と発言され、国として過労死基準超えの時間外労働を容認しないことを明確に示されている。
 したがって、過労死認定ワースト1位となっている自動車運転の業務については、第1項の施行と同時に、過労死水準を根拠とした規制である「単月100時間」「2〜6か月平均80時間」を適用されたい。

3.自動車運転の業務における「一般則の施行から5年後」までの間の労働時間等の規制

 「一般則の施行から5年後」までの猶予期間は、上限規制の円滑な導入のための準備期間であり、この適用猶予期間中は、引き続き現行の改善基準告示に基づき労働時間管理が行われることとなる。しかしながら、同告示は過労死基準を上回る水準となっていることから、総拘束時間の短縮(年3,300時間)を図られたい。

4.拘束時間・休息期間の法定化と限度時間との相関の明確化  

 長距離運行を行う事業者では、ひとつの労働が複数の暦日にまたがるケースが非常に多い。そのため、労使ともに所定労働時間・時間外労働という基準による管理ではなく、拘束時間・休息期間がより理解しやすい時間管理の基準として機能している実態にもある。  
 したがって、現行の改善基準告示の拘束時間および休息期間(原則11時間、週2回まで8時間、隔日勤務・分割休息その他の例外あり)を労基法の条文に規定し、あわせて、拘束時間は労働時間と休憩時間の合計であることを政令等に明記されたい。

5.労働時間管理の徹底と不適正事業者の指導強化

 小規模の事業者を中心に、「運賃歩合」という給料体系のところも多く、事業者、ドライバーともに、労働時間に対する考え方が希薄な実態にある。  
 したがって、「働き方改革」の実現はもとより、安全な運行は労働時間の適切な管理が前提であることの徹底を図る観点から、不適正な運行管理を行う事業者への指導および退出を強化されたい。

以上 

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