
(1)労働協約とは
労働組合法に定める「労働協約」は、労働条件や労使関係のルールなどについて、労使の権利や義務を定めるために、労働組合と使用者の間で「合意」したことを「書面
」にしたものです。労使双方の「代表者による署名または記名押印」によって効力を発します。
なお、合意内容を書面にし署名または記入押印すれば、その内容はもとより、「協定」「覚書」「確認書」などの名称や形式(メモ書きも可)を問わず、全てが労働協約としての効力をもちます。
*労働協約は、労働組合のみが使用者との締結を許されているものです。
※「労働組合法」
※「労働基準法」
【労働協約を結ぶにあたっての留意点】
(1)合意に達したものから一つずつ締結し、段階的に内容の充実をめざす
(2)規定を明確に労働協約の実効性を確保
解釈をめぐってトラブルを起こさないよう、明確な用語を使いましょう。
(3)労働協約の締結形式
(a)名称:「労働協約書」「労使協定」「覚書」「メモ」など、労使間の合意にもとづくものであること。
(b)体裁:包括的労働協約として一本化できなくても、その都度必要な課題から締結しても効力に違いはない。
(c)形式:団体交渉で合意に達した事項を書面に作成し、両当事者が署名または記名押印したものであること(労働組合法第14条)
*当事者=労働組合は執行委員長、使用者は社長および代表取締役
(d)期間:期間の定めは自由。定めのある場合は最長3年です。期間の定めのない協約は、当事者の一方が少なくとも90日前に署名または記名押
印した文書で予告すれば、解約することができる。(労働組合法第15条)
(4)労働協約の拡張適用
労働協約は、当事者以外の者にも拡張適用される場合があります。一つは、その事業場の労働者すべてが組合員でない場合、常時使用される同種の労働者の4分の3以上の労働者がこの労働協約の適用を受けるようになった時で、残りの非組合員にも労働協約が適用になります。(労働組合法第17条)
もう一つは、地域的拡張に関する規定です(労働組合法第18条)
(5)労働協約の内容
(a)労働条件の基準に関すること(賃金・労働時間・休日休暇・解雇など労働者の待遇に関すること)
(b)労使関係に関すること(労働組合と使用者との諸関係に関すること)
(c)その他のこと(労働協約の締結目的・適用範囲・用語の定義・有効期間などの規定)
(2)就業規則とは
就業規則は、労働基準法によって「常時10人以上の労働者を使用する使用者」に、作成と行政官庁(労働基準監督署)への届け出が義務付けられており、使用者は経営権の一環として作成・変更することができます。ただし、その際には、労働者への周知と意見聴取、行政官庁への届け出(意見書面
の添付を含む)をしなければなりません。「労働協約は就業規則よりも優位
」で、とりわけ、労働条件等の協約に定めた規範的条項は、使用者の思惑等による一方的な変更は許されず、労働協約の変更手続きを経なければならない。
(3)労働契約とは
労働者と使用者とが対等の立場に立って、一方が労務に服することを約し、地方がその報酬を与えることを約する契約をいう。(民法)
採用を決め、労働契約を締結する際には、使用者は労働者に対して、次に事項を明示しなければならない。(労基法15条、同法施行規則5条)
(1)労働契約の期間
(2)就業の場所・従事すべき業務
(3)始業・就業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無・休憩時間・休日・休暇・交代勤務させる場合の交代期日や順序など
(4)賃金の決定・計算・支払方法・締切および支払時期・昇給
(5)退職
(6)退職手当の定めの適用対象労働者の範囲・決定・計算・支払方法、支払時期
(7)臨時に支払われる賃金、賞与、最低賃金額
(8)労働者に負担させる食費、作業用品その他
(9)安全・衛生
(10)職業訓練
(11) 災害補償、業務外傷病扶助
(12)表彰・制裁
(13)休職
これらのうち(1)〜(5)については、(4)のうちの昇給に関する事項を除き、労働者に書面
を交付することによって明示しなければなりません。しかし、(6)〜(13)については、定めがない場合には明示する必要はありません。
退職・解雇
労働者からの労働契約の解約の意思表示である「任意退職」や期間満了による「退職」と異なり、労働基準法では、使用者の一方的意思表示で労働契約を解約する「解雇」については、少なくとも30日前にその予告するか、30日前に予告をしない使用者は解雇予告手当(平均賃金の30日分以上)を支払わなければなりません。
ただし、長期に無断欠勤が続くなど労働者の責めに帰すべき事由に基づいて解雇する場合などで、労働基準監督署長の認定をうければ解雇予告義務は免除されています。
なお、労働者が業務上負傷し、または疾病にかかり、療養のために休業する期間や産前産後の女性が労働基準法第56条の規定によって休業する期間とそれぞれその後30日間は解雇することができません。
※「解雇が法律で禁止されている場合」
目次にもどる
|