1.労使協議制の確立  労使協議を充実させるためには、労働組合が職場実態をしっかりと把握するとともに、組合員の団結を強めることで、経営に労働組合の力量を認めさせることが不可欠です。緊張感を持った民主的労使関係を深化させるなかで「労使協議制」の充実に取り組んでいきましょう。
 団体交渉では、組合員の労働条件や待遇にかかわる事項を広く扱うことが法的に保障されていますが、経営施策にかかわる事項などについては義務的団交事項とされておらず、労使話し合いの場としては不十分です。経営施策の決定が組合員の労働条件や待遇に重大な影響がある場合、「団体交渉」のみでは、事後的となる恐れがあり、とりうる対応策も大きく制限される可能性が高いと言えます。そのために、経営にかかわる事項などを話し合う場として「労使協議会」を設置することにします。
 「労使協議会」は、労働協約の規定が根拠となります。「労使協議会」は、その設置を含め、どのように定めるかは、まさに労使自治に委ねられており、法的な縛りはありません。労使協議会の位 置付けには、主に次のようなタイプがあります。

●労使協議会のタイプ
(1) 団体交渉の前段協議の場とし、合わせて経営にかかわる事項を話し合う
(2) 主に経営にかかわる事項を話し合い、労働条件などに関連する部分を団交に移行し決定する
(3) 団体交渉で扱う事項と労使協議会で扱う事項をあらかじめ定めておき、団体交渉と労使協議会を切り離しておく

 今回は、(2)のタイプについてのモデルを掲載していますが、どのタイプをとる場合でも、労働条件等の変更を発生させる恐れのある経営施策について、それが実施される以前に労使で話し合い、労働条件等にかかわる部分は団体交渉で最終決着をはかれるように協約を整備しておくことが必要です。
※協議整備にあたっての留意点
Q&A「退職金制度」

モ デ ル

(1)労使協議会の設置
第18条 会社と組合は、民主的な労使関係を維持し、企業の発展と従業員の労働条件の向上に資するため、労使協議会を設置する。

(2)労使協議会の構成
第19条 労使協議会は、会社と組合が選出した(  )名ずつの委員をもって構成する。 ※労使協議会の構成

(3)労使協議会の付議事項 第20条(付議事項) 労使協議会の付議事項は次の通りとする。

  1. 経営の基本計画、年次計画、職制機構の改廃、会社の分割、合併、譲渡、事業所閉鎖・縮小、重要な財産取得および処分など経営関する事項
  2. 新技術の導入、新規事業計画、事業所の新設および廃止、海外における事業に関する事項
  3. 労働協約および就業規則に定めのない規定の制定・改廃に関する事項
  4. 従業員の安全衛生、作業環境に関する事項
  5. 公害防止など企業の社会的責任に関する事項
  6. 従業員の採用計画、教育に関する事項
  7. 従業員の福利厚生に関する事項
  8. その他、会社と組合が必要と認めた事項

(4)開催と運営ならびに合意事項の取り扱い
第21条 労使協議会は、原則として年○回開催する。ただし、会社または組合のいづれか一方が申し入れた場合は、その都度すみやかに開催する。
2.労使協議会の議長は、会社、組合が交互に行う。
3.会社と組合がそれぞれ指名した者に議事録を作成させる。議事録は、書面にし、双方の代表委員が署名または記名捺印し、双方1通づつ保管する。
4.労使協議会で合意決定した事項は、書面にし、双方の代表委員が署名または記名押印し、双方1通づつ保管する。

(5)守秘義務、機密事項の扱い
第22条 会社および組合は、労使協議会の席上、特に機密とすることを約した事項については、互いに他に漏らしてはならない。
2.労使協議会の委員およびその関係者は、労使協議会で知りえた事項を利用し不当な利得行為をしてはならない。

 

目次にもどる