企業において合理化や倒産問題が生じた場合、労働者の雇用と権利を確保することが、労働組合としてもっとも重要な課題になります。

 経営側の一方的な合理化提案を防ぐには、日常的な組合活動の強化と、労使協議の充実が不可欠です。会社が、労働者や労働組合の意志を無視して、一方的に合理化や雇用調整、倒産などを提案するというような事態を生じさせないためには、まず組合活動が活性化していて組合員から十分に信頼されていなければなりません。同時に、労使協議が名実ともに充実していて、組合が経営者と対等に交渉や協議ができていることが必要です。

 職場の些細な問題から経営方針に至るまで、あらゆる課題について頻繁に協議の場をもつこと、そして重要な事項については事前に労使で協議するという「事前協議」のルールを確立することが大切です。日常から、「事前」に対処することの重要性について、労使確認として厳しく取り付けておくことが大切になります。

 「不況だ」「経営危機だ」といっても、そのしわ寄せを労働者だけに転嫁することは、絶対に許してはなりません。万一、合理化が避けられない場合でも、労使対等の立場で、公平・平等の原則を貫いて乗り切っていくことが必要です。また、組合内においても、「一職場の問題」「一部組合員の問題」として軽視することなく、全組合員の問題として、合理化の対象職場、対象者を公平・平等に負担するようにしていくことが大切です。

 最近のリストラは、企業組織の再編を伴うことが多く、企業再編リストラともいうべき特徴があります。そして、合併・分社化・営業譲渡・業務委託などの手法に加え、独占禁止法による純粋持株会社、商法改正による株式転移・株式交換、商法改正による会社分割などの最近の企業再編法制による手法も加わり、これらの組み合わせによる企業再編リストラが行われようとしています。倒産法制でも、新たに制定された民事再生法による企業再編が行われており、会社更生においても営業譲渡型など新たなタイプが生じています。

 本マニュアルは、企業合理化やリストラについて、それぞれの方式の特徴を述べるとともに、労働者や労働組合が雇用・労働条件を確保するためにどのように対応したらよいのかをまとめたものです。

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