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機関紙づくり vol.23
広報担当者の立ち位置とは何か
労働組合の「広報部」は、教育と宣伝活動を担うセクションとして、日常的に機関紙を発行するのが主たる任務となっています。そして、広報担当者が孤軍奮闘しパソコンと格闘している姿が浮かび上がってきます。時代の変化とともに鉛筆がパソコンに変わったものの、機関紙づくりに取り組む広報担当者の姿は不変といっても過言ではありません。
そこで本欄の最後に、「広報担当者の立ち位置」、つまり機関紙づくりを行ううえで広報担当者のポジションをどう位置付けるかについて、新聞社の「整理部」を事例に考えてみることとします。
整理部はキャッチャー
新聞社の日常業務を大きく分けると、「出稿部」と「整理部」に分けられます。「出稿部」は、企画・取材・原稿執筆を担当するセクション。「整理部」は、原稿の取捨選択・見出し付け・レイアウト作業など、それぞれ独立した一連の作業を分業で行っています。
新聞社の「整理部」は、キャッチャーに例えられますが、これは「出稿部」が投げてくるボール(原稿)を受け止めるという意味でこう例えられています。「出稿部」が投げてくるボール(原稿)はストレートばかりではなく、スライダーもあれば、チェンジアップなど味のあるボール(原稿)もあり、それぞれのボールに合わせた受け方が必要になります。キャッチャーからサインを送り、投げるボールを要求する場合もあります。これは関連する原稿の要求、写真やイラストを求めるということに通じます。まさに「整理部はキャッチャー」という例えは、的を射た事例といえるでしょう。
編集作業=「板前さん」
次に、機関紙の編集作業を「板前さん」の調理に例えてみましょう。
原稿の取捨選択・価値判断は料理の材料を選定する作業、見出し付けは調味料の加減とともに、煮るのか、焼くのか、蒸すのかなどの調理法を決定する作業、レイアウトは調理されたものをいっそう美味しく見せるための盛り付け――という具合に考えると「調理」を「編集」と例えることが可能です。
もう少し具体的に説明すると、美味しい料理を作るためには、まず材料を選ぶ目が必要。新鮮なものを選び、旬の食材に適した調理法で料理すること。また、美味しい料理を作るためにはそれなりの腕が必要で、調味料の具合、隠し味は何にするか。盛り付けも、食欲をそそるかどうかの大切な決め手になり、どんなに素晴らしい味付けでも、盛り付けがまずければ「食べたい」という気は起きません。その意味でレイアウトは大切です。
整理部はピッチャー
今度は「整理部」と読者との関係で考えてみましょう。読者にボール(完成された紙面を提供する)を投げるのが「整理部」の役割です。「出稿部」から投げられたボール(原稿)を、カーブやシュートなどの球種に変えて読者に投げる(これは編集された紙面を読者に提供することに例えられます)という意味で、読者との関係でいえば「整理部はピッチャー」ということも可能です。ボール(原稿)に変化をつけ、読者へ多彩な投球をすることが「整理部」の大きな役割となります。
このように考えると、「整理部」=「広報部」と例えてみると、労働組合の「広報部」が日常的に果たす役割のようなものが見えてきます。ただ、この場合「一人親方」の広報担当者では当然、限界があります。これまでも何度か書かせていただいているように、やはり機関紙づくりは組織が一丸となって行うということが大切です。
以上のように、新聞社の「整理部」を広報部、「板前さん」は広報担当者と言い換えれば、その立ち位置が見えてくるのではないでしょうか。最後に一言、「何事も、常にちょっと見よりは難しい」とは、マーフィーの法則※のひとつです。
- ※マーフィーの法則とは、"If anything can go wrong, it will."(「失敗する可能性のあるものは、失敗する」)に代表される「経験則」や、「法則」の形式で表明したユーモアである。出典:ウィキペディアより
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