違法駐車の誘発事故で
書類送検

日本ハイウェイ セーフティ研究所 所長 加藤紀明


 聞く人によっては「えーっ、うそ!!」と耳を疑うかもしれない。事故に直接関与していないのに、たまたま駐車していて、これを避けようと対向車線にはみ出し、バイクと衝突した死傷事故に関し、埼玉県狭山署は「事故を誘発する可能性を予見できた」として、駐車車両の所有者2名に対し、自動車運転過失致死傷容疑で書類送検した。
 事故が起こったのは、本年5月中旬の午前11時半ごろ入間市の市道交差点付近にワゴン車2台が駐車していて、これを避けようと対向車線にはみだし、出合い頭に原付バイクと衝突。バイクを運転していた男性(22)が死亡、同乗していた妻(19)が軽傷を負った。現場の交差点に信号機はなく、しかもクランク状の変形四差路。1当となった軽の進路右側はコンクリート塀に挟まれた形で見通しが悪い、という悪条件下で事故は発生した。  送検された被疑者たちは、数十メートル離れた住宅で塗装作業をしていたが現場は「交通量も少なく、危険はない」と容易に判断したと供述しているようだ。
 県警は、こうした誘発事故に対して「(罰則の軽い)道交法違反ではなく、(懲役刑もある)自動車運転過失致死傷罪の適用で、厳しく対処していく」と語っているという。  罰則を強化すれば事故は減る、と単純に考えるのは過ちのもとだが、ここなら大丈夫だろうとか、夜間なら交通も少ないからとか、明るく見通しも良いからとか、ひとりよがりの判断材料を並べて、自分の違法性を勝手に正当化しようとするのは間違いの第一歩と考えなければならない。
 ここで、飲酒運転による事例などを引き合いに出すのも、決して筋違いではないだろう。自分のことは自分がもっともよく知っているからと手綱をゆるめると、やがて歯止めがかからなくなってしまう。裏道・抜け道の隅ずみまで知り尽くしている、時間帯で流れが変わる、その変化まで知っていると思っている場所で、思いがけない事故が起きやすいと指摘する人もある。ここは大丈夫、自分の庭のようなものだ、と思い込んでしまう心に油断が生ずるのだ。
 ある中堅配達会社の調べによると、朝礼を終えて「出発進行」とターミナルを出て、一時間経つか経たないうちに事故を起こす比率がかなり高い、と聞いたことがある。気持ちや精神の安定が、さまざまな雑念でゆらいで、安全運転に集中できていないからだろう。安全は双方向から検証しなければ、つい独善に陥りやすいことを反省しなければならない。
 冒頭の誘発事故もそうだが、双方向どころか、まったく身勝手な唯我独善で、他者の行動や判断は念頭になかったのではないか、と思えてしまう。ちなみに、1当となった不運な軽のドライバーは、現場近くの居住者だったという。