追突されない・させない運転術

日本ハイウェイ セーフティ研究所 所長 加藤正明


  12月に入ると、にわかに身辺りが騒がしくなる。仕事が増えることは、ある意味では歓迎すべきことだが、それとともに事故の心配もしなければならない。こればかりは「事故を起こさないよう、安全運転で行け」「ハイ、分かりました。気をつけます」とすんなり片がつくというものではない。だからといって、この忙しい時期に、くだくだと分かりきった説教をしている閑もないし、聴いてくれる人間もいない。まさにタイム・イズ・マネーで、みんな忙しい。しかし皮肉なもので、こんな繁忙期ほど気を付けているつもりでも思いがけない"あってはならない事故"が起きやすい。
 そして、普段は高速道路の利用を制限しているところでも、特別の時だから規制を緩める。誰でも思いは同じで、高速道路のラッシュはやがて帰省客も加えてピークに達する。車の数に比例して事故の発生件数も増加する。毎年、同じことが繰り返される。事故の形態で突出しているのは、相も変わらず追突である。
 追突防止のためには、スピードを抑え、車間距離をとれ…などと通り一遍のことを言っても、追突が減るというものじゃない。それでは追突されない運転をすれば良いわけだが、これには「後ろからぶつかってくる車は避けようがない」という抗議が出そうだ。この抗議には一理がありそうだが、必ずしも正論とは言い切れない。
 というのは、追突の状況を想定してみると、後続車がぶつかってしまうのは、前車が何らかの理由で急に減速をしたとか、あるいは下り勾配でどんどん加速しているのに気付かないで、目の前に前車が迫ってからブレーキを踏んだが間に合わなかった、といった例が多い。つまり、極端な速度差が生じやすい走行条件があるにも関わらず、その条件に注意を払わず、結果 として対応が間に合わなかったということだ。中には、前車の動きに気を取られ、ただひたすら"ぴったり追従"していて、ぶつかるまで危険の意識はなかったという例もある。不思議なことに、こうした追突が生じやすい場所は、決まって「見通 しの良い」地点である。
 どうもこの"見通しの良い"というのがくせ者で、よく考えると前車にぴったり追従していて見通 しの良いはずがない。そこで、こうしたぴったり追従に気付いたら、左右どちらかに走行位 置をずらして、前方の交通状況や勾配などの環境地形などに目が向くようにしてやると良い。そうすれば、自分がどういう状況下で運転しているかに気付きやすくなり、漫然と追従していて覚低走行に陥る一歩手前で覚醒効果 に救われた、という効用も期待できる。つまり、追突させないための高度なプロの運転術である。コンボイなど、仲間内の集団走行には是非活用したいものだ。