2011年度賃金・労働条件実態調査報告書の発刊にあたり

 日本経済は、3月11日に発生した東日本大震災の影響を受けて2011年1〜3月期のGDPはマイナス1.7%となり、4〜6月においても0.5%のマイナス成長となりました。
 トラック運輸も、2010年下期以降は景気の調整局面入りに加えて震災の影響を受けて、2011年上期にかけて輸送量は急減となりました。
 一方で、日銀の「企業向けサービス価格指数」では、トラック運賃などの動向を示す道路貨物輸送の価格指数が年明け以降は上昇傾向となり、4月以降も高水準で推移しています。また、各社で差はあるものの、第1四半期(4〜6月)決算においては、当初見込みよりも業績を上方修正するところが多く見られました。
 今回の調査は、156単組(101,179人)のご協力をいただきました。本冊子には、賃金・労働条件実態調査の結果を中心に、春闘解決調査の結果も一部収録しました。
 本年の調査結果では、月額賃金(2011年6月)は加重平均(以下同様)で355,735円(対前年比2,714円・0.8%増)となり、未曾有の災害がトラック運輸にも大きな影響を与えたものの、昨年に引き続き増額となりました。その内訳は、所定内賃金は前年と比べて6,358円の増額、仕事給も372円の増額、所定外は4,016円の減額となっています。また、労働時間は207.7時間で、近年のピークである2006年(220.9時間)より6%減少し、1999年の205.8時間以来の水準となりました。
 一方で、2010年の年間賃金は5,282,207円で、前年を352,264円上回りました。また、年間労働時間は、時間外労働は514時間(前年478時間)、総労働時間は2,446時間(同2,428時間)となっており、前年より増加しています。なお、2009年はリーマンショックに端を発した金融危機の影響で、厚生労働省・毎勤統計でも2009年2〜3月を中心に労働時間が大幅に減少しており、2010年の労働時間は、産業全体を見ても前年と比べて増加となっています。
 また、平均年齢は、本年も前年を上回りました。厚生労働省の賃金構造基本統計調査では、産業全体の平均年齢は2010年は42.1歳で、1989年の39.3歳から2.8歳の上昇でしたが、営業用貨物(大型と普通・小型の加重平均)は2010年は44.0歳で、1989年の38.3歳から5.7歳の上昇となっています。運転免許新規取得者の減少が続く中で、ドライバーの平均年齢の上昇スピードは産業全体より速まっており、近い将来の高年齢化と要員不足の深刻化が懸念されます。組合員の働きがいはもとより、トラック運転職を志す若者に魅力のある産業の実現のためにも、労働時間の短縮とともに、まずは定昇要素を持つ賃金体系を確立した上で、基本給をはじめとした固定給の比率を高め、安定した生活を送ることができる賃金体系の確立が求められています。
 このような労働条件を改善させ、働くものの雇用の安定、生活向上を図るのが労働組合の役割であり、春季生活闘争はそのための運動(手段)の一つでもあります。来るべき2012春季生活闘争の取り組みにあたり本資料を参考にしていただければ幸いです。
 終わりにあたりまして、多忙の中、本資料の作成にご協力いただきました、単組および地連・都府県連の皆さんにお礼申し上げ、報告とします。

運輸労連 中央本部 労働政策部