2008年度賃金・労働条件実態調査報告書の発刊にあたり

 2008年は、異常とも言える原油価格の高騰がトラック運輸業界を直撃しました。ニューヨーク原油(WTI)の価格は、過去2年間は1バレルあたり60ドル前後で推移していたものが、2008年7月には147.27ドルと、史上最高値を記録しました。この影響を受け、8月には全国平均の現金価格において、ガソリン価格がリッターあたり190円、軽油価格でも170円(石油情報センター調べ)に迫るなど、オイルショック以来の高値をつけました。2002年の春以降「いざなぎ景気」を超える景気拡大が続いてきたものの、規制緩和による事業者の激増から、運賃・料金は低位の水準で推移する一方、排ガス規制への適合車代替や、スピードリミッターの装着義務化、さらには違法駐車の民間委託対応など、相次ぐコストアップ要因に苦しめられてきた中で、今回の燃油価格の高騰が追い討ちをかけました。全日本トラック協会がまとめた2008年1〜10月の倒産件数(負債額1千万円以上・除く自主廃業)は273件で、前年同時期の131件に比べ、倍以上の件数となっています。さらに、燃油価格が暴騰した8月以降の3ヶ月では、前年の38件に対し、今年度は109件と3倍近い件数となっています。これまで、各企業は様々な対策を施すことによって必死に耐えてきたものの、今回の燃油価格の高騰によって自助努力の限界を超えてしまったことから、事業経営の継続を断念した事業者が相次いでいるものと思われます。
 今回調査の有効集約数は136組合、対象組合員数は96,463人(前年88,695人)でした。集約組合を規模別でみると、大規模(1,000人以上)が12組合で対象者数は79,960人、中堅規模(300〜999人)は16組合で8,608人、中小規模(299人以下)が108組合で7,895人となっています。このうち538人の運転者を含む女性労働者の合計は4,459人で総数の4.6%でした。
 今回の集約結果による全体の傾向値を前年と比較してみると、全体的に労働時間は減少しているものの、所定内賃金および総額賃金は増加しており、とりわけ男子事務職での上昇率が大きいことが特徴点といえます。全国単組と地方ブロックの比較では、全職種の単純平均の上昇額が、全国単組より9ブロックの方が上回っており、月額だけでみると、規模間格差は若干縮小したといえます。
 2005年をピークに労働力人口の減少が始まったと言われている中で、新たな労働力の確保や定着率の向上をはかるためにも、賃金・一時金を中心とする労働諸条件の引き上げが急務です。そして、働く者の雇用の安定、生活向上をはかるのが労働組合の役割であり、春闘はそのための運動(手段)の一つでもあります。来るべき2009年春季生活闘争の取り組みにあたり本資料を参考にしていただければ幸いです。
 終わりにあたりまして、今回の調査では、協力していただく単組の負担軽減をはかるため、連合調査と重複していた項目を統一しました。そのため、調査書の作成作業に手間取り、発送が遅れてしまいました。大会等、多忙な時期に重なってしまったことにお詫び申し上げますとともに、本資料の作成にご協力いただきました、単組及び地連・都府県連の皆さんにお礼申し上げ報告とします。

全日本運輸産業労働組合連合会 書記次長 高松伸幸