トラック運輸業界を取り巻く環境はさらに厳しさを増しています。2003年9月からのスピードリミッターや10月からのPM除去装置の装着義務化によるコスト増は、登録年度により3年間の猶予期間がありますが、その負担は避けられません。さらに、高速道路料金の別納割引制度が、一部業者の不正利用により突然廃止されることになりました。ETC利用を原則とした新たな割引制度を設立する方向で議論されていますが、割引については率・額ともこれまでよりは引き下げられると予想されており、企業のコストアップにつながることは必至です。
 一方、国土交通省の発表による2003年3月末の貨物運送事業者数は、前年より1,275者増の58,146者となっています。低位で推移する物量を巡る企業間競争はさらに激化するものと思われます。
 こうした状況が、今年度の調査に反映されているといえます。
 調査には194組合(前年218組合)のご協力をいただきました。そのうち賃金項目に関する有効集約数は137組合、対象組合員数は91,392人(同94,361人)でした。集約組合を規模別でみると、大規模(1,000人以上)が12組合で対象者数は75,334人、中堅規模(300〜999人)は12組合で6,664人、中小規模(299人以下)が113組合で9,394人となっています。このうち212人の運転者を含む女性労働者の合計は4,397人で総数の4.8%でした。
 今回の集約結果の概要における全体の傾向値を前年と比較してみると、総体的に労働時間が増加しているにもかかわらず、所定内賃金、歩合給および超勤手当など、すべての項目で減少しており、企業規模・職種を問わず総額賃金が減額となっています。さらに、一時金の低下から年間所得でも減額となっており、大手組合の方がその幅は大きくなっています。こうしたことから、個別による年収ベース比較では、産業内格差は若干縮小したといえますが、産業間格差においては拡大している傾向があらわれています。
 総論的には、私たちトラック運輸産業の経営環境がさらに悪化していることから、賃金や一時金、退職金を中心とした労働諸条件が他産業水準よりいっそう低下する傾向にあります。このような労働条件を改善させ、働く者の雇用の安定、生活向上をはかるのが労働組合の役割であり、春闘はそのための運動(手段)の一つでもあります。来るべき2004年春季生活闘争の取り組みにあたり本資料を参考にしていただければ幸いです。終わりにあたりまして、多忙のなか本資料の作成にご協力いただきました、単組及び地連・都府県連の皆さんにお礼申し上げ報告とします。

全日本運輸産業労働組合連合会
労働政策部長 桜木 隆